ゾコーバを処方するのはヤブ医者か?その2(実例)

4月から一般流通した治療薬「ゾコーバ錠」 新型コロナのゲーム・チェンジャーか
以前、「ゾコーバを処方するのはヤブ医者か?」という記事を書きました。また、神戸大の岩田教授も「新型コロナの治療について勉強をしている医師は、おそらく使わないでしょう。」と書いています(記事をみる)。以下の記事を書いた医者はどうでしょうか?


2022年11月、新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ錠」が緊急承認されました。重症化リスクがない患者さんにも使うことができ、多くの患者さんの助けになると期待が高まっています。当初は国の一括管理でしたが、4月から一般流通しています。その本質は、塩野義製薬と北海道大学の共同研究で生まれた「3CLプロテアーゼ阻害薬」で、コロナウイルスが増殖するために必要な酵素の働きを選択的に阻害し、体内での増殖を阻止します(1)

一般流通されたことで、一般の医療機関や薬局で取り扱えるようになり、1錠7500円と高いですが、9月までは治療費は公費負担になるので、軽症の患者さんにも使うことができます(2)。12歳~69歳で、腎臓・肝臓障害の既往と妊娠の可能性がない、軽症・中等症の患者さんに使用できます。飲み方は、1日目は1回3錠、2~5日目は1回1錠で、5日間で合計7錠、服用します。

私は承認されてすぐ国に登録し、何人かの、今は軽症だけど重症化リスクの高い患者さんに処方しました。私の周囲の先生もだいたい同じです(3)。その結果「ゾコーバは、かなり効く」という印象を持ちました(4)。重症化リスクが高い患者さんには、ラゲブリオやパキロビッドを優先して処方する場合もありますが、はっきり言って、ゾコーバで充分だと思います。副作用が少ない点もマルです(5)

私は塩野義の回し者ではありませんが、ゾコーバは効きます。妊娠中の方や妊娠の可能性がある女性には投与できませんし、一緒に飲んではいけない薬が36種類と多いのも難点で、これは今後ぜひとも改善して頂きたいところです(6)が、私は新型コロナのゲーム・チェンジャーになりうる薬だと考えています(7)

◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。


下線部について説明します。

(1)この作用機序は、ニルマトレルビルというファイザーが出しているパキロビッドパックに含まれる薬と同じで、パキロビッドパックは既に世界中で広く使われ効果や副作用についてのデータも非常に多いです。一方、ゾコーバ®(エンシトレルビル)はデータが乏しく、韓国製薬会社が開発に参加したにもかかわらず、韓国では緊急使用承認要請および政府購入の必要性が低いと決定されました(記事をみる)。どちらを使う方が患者のためかは明らかです。

(2)現在流行しているオミクロン株に感染した患者のほとんどは薬を使わなくても、あるいはアセトアミノフェンなどの安価な解熱鎮痛薬だけでも治癒します。

(3)「類は友を呼ぶ」のでしょうか?「新型コロナの治療について勉強をしている医師は、おそらく使わない」はずです。

(4)「エビデンス」に基づいてではなく「印象」で薬をつかうというのは、まともな医者のすることではありません。

(5)臨床試験も不十分で、使用した症例数も少ない発売されたばかりの薬の副作用をなぜ「少ない」と言い切れるのか理解できません。エビデンスがあれば見せて欲しいです。

(6)併用禁忌になるメカニズムを考えれば、改善されることはあり得ないです。

(7)これも「エビデンス」に基づいてではなく個人の「印象」に基づく「感想」です。

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