デング熱のウイルスに強力な新ワクチン候補を発見、未知の標的を特定
以下は、記事の抜粋です。
デング熱は蚊が媒介するウイルス病。日本では2014年に国内感染が連日発生していた。感染者は年間4億人に上ると推定されている。
研究グループは、デング熱のウイルスに対するワクチン開発のため、デングウイルスに感染した人が持つ抗体がデングウイルスのどのタンパク質のどの部分に反応しているかを分析。ワクチンの標的候補を絞り込んだ。
その結果として、デングウイルスの外被を構成するタンパク質の「外被ダイマーエピトープ」と呼ばれるこれまで知られていなかった標的候補が特定された。
この標的を攻撃する抗体は、多様な血清型のデングウイルスに対して幅広く効果がある。昆虫細胞とヒトの培養細胞で実験したところ、ごく少量でウイルスの生成を完全に阻止できた。
元論文のタイトルは、”A new class of highly potent, broadly neutralizing antibodies isolated from viremic patients infected with dengue virus.”です(論文をみる)。
研究グループは、デングウイルスに感染した7名の患者から単離したB細胞を使って145のモノクローナル抗体を作成し、そのエピトープ(ウイルスの抗体結合部分)を調べました。その結果、145の中、83のモノクローナル抗体はデングウイルスの外被タンパク質と直接結合することが示されましたが、残りの62抗体は高次構造(立体構造)をとったウイルスとだけ結合したそうです。専門的に説明すると、83の抗体はイムノブロットで外被タンパク質と反応するが、62の抗体はしないということです。
さらに調べたところ、外被タンパク質に直接結合しないこれらの抗体は、外被タンパク質の2量体構造が作る”envelope dimer epitope (EDE)”とよばれるエピトープに結合することがわかりました。興味深いのは、EDEと結合する抗体のほとんどは培養細胞でのデングウイルス感染を抑制するのに対して、外被タンパク質ペプチドと反応する抗体は83の中で1つだけしか抑制しなかったそうです。しかも、EDE抗体は4種類あるデングウイルスのすべてを認識するそうです。
とてもうまく行きそうな話ですが、個体でEDEに対する抗体を誘導するためにどのような抗原を用意すれば良いか、という大きな問題が残っています。
2度目の感染の方が重症になることがあるデングウイルスのワクチン作成は、堀田進先生による発見から50年以上経った今でも難問として残っています。熱帯で蚊に刺されても安心な時代が早く来ることを祈ります。
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