降圧薬は高齢者の転倒リスクを高める

降圧薬は高齢者の転倒リスクを高める
以下は、記事の抜粋です。


降圧薬を服用している高齢者は転倒して股関節や頭部を骨折する可能性が高いとの報告が、「JAMA Internal Medicine」オンライン版に2月24日掲載された。エール大学内科・公衆衛生学教授のMary Tinetti氏らによる研究。

降圧薬の副作用にはめまいや平衡感覚障害があり、降圧薬を服用している高齢者では服用していない高齢者に比べて、転倒後に大きなけがをする可能性が30~40%高く、以前に同様の経験がある人ではそのリスクは2倍以上という。

Tinetti氏らは70歳以上の高血圧患者約5,000人のデータを調べたところ、55%近くが何らかの薬剤を服用し、31%は数種類の降圧薬を服用していた。14%は降圧薬を使用していなかった。3年間の追跡調査中に、446人(9%)が転倒して大きなけがをした。けがをするリスクは降圧薬を服用している人のほうが服用していない人よりも高かった。また、以前に転倒で大きなけがを経験した人のほうがリスクが高かった。


元論文のタイトルは、”Antihypertensive Medications and Serious Fall Injuries in a Nationally Representative Sample of Older Adults”です(論文をみる)。

用いられた降圧薬は、レニンアンギオテンシン系に作用する薬物(ACE阻害薬とARB)が56.6%、利尿薬が54.2%、βブロッカーが45.9%、Ca拮抗薬が7.0%でした。重複投与があります。また、利尿薬が多くてCa拮抗薬が少ないのが日本と違います。

上の分類で、グループ間には差が認められなかったことから、降圧メカニズムと転倒はあまり相関がなさそうです。また、不思議なことに用量依存性もなかったようです。

著者は「転倒後のリスクを考えれば、高齢者の高血圧をどの程度積極的に治療するかを決定する際、降圧薬がもたらしうる害と恩恵について評価する必要がある」と述べています。確かに高齢者、特に女性の転倒はQOLを著しく低下させる骨折を起こしやすいので、生物学的な寿命のデータだけに基づいて高齢者の血圧をむやみに下げるのは、問題があるかもしれないと思いました。

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