政府、未承認薬を使用可能に…ドラッグ・ラグの解決と混合診療の解禁?

政府、未承認薬を使用可能に 約200の医療機関で 

以下は、記事の抜粋です。


政府は6月15日、抗がん剤など欧米で承認されながら日本で未承認の医薬品や医療機器を国内で使えるようにする仕組みを導入する方針を固めた。特例的に使用できる「選定医療機関」を指定、2020年までに全国で200機関程度を想定している。費用は基本的に自己負担。併用した保険診療の保険適用は認める方向だ。

医療先進国を目指す政府が、近くまとめる経済成長戦略に盛り込む。新しい治療法を待望する患者にとっては朗報となるが、日本医師会などからは安全性や有効性が確認できていないとの反発が予想され、調整が難航する可能性がある。

他国で最初に発売された新薬や機器が自国で承認されるまで長い時間がかかる状況は「ドラッグ・ラグ」「デバイス・ラグ」と呼ばれる。日本は世界で飛び抜けて長いとされ、解消策が求められている。

政府案では「必要な患者に世界標準の医薬品・機器を迅速に提供し、難治療疾患患者の選択肢を拡大する」と強調。使用できる未承認薬・機器の範囲は今後検討するが(1)選定医療機関の裁量に任せる(2)医療機関の判断で使用し、事後確認制度を設ける―などの案が浮上している。


医薬品の市場での販売は、その国の基準で決定されます。例えば、ドイツで開発された薬をアメリカで販売するためには、US FDA (Food Drug Agency)の認可が必要です。アメリカの薬を日本で販売するためには、厚生労働省の認可が必要です。どこでも同じように思われますが、日本での認可に時間と費用がかかりすぎることが問題になっています。

2006年の調査結果では、医薬品の最初の発売国から、自国で販売するまでの平均期間は、アメリカ、イギリスでは、約1.4年、タイ、シンガポールでは、約3年、日本では3.9年でした。この時間差(ドラッグ・ラグ)の存在により、日本の患者は欧米の患者より治療が遅れたり、手遅れになったりしています。

舛添元厚生労働大臣は2007年10月13日、日本で薬の承認にかかる時間を欧米並みに短縮するため、薬の審査制度の見直しをすると明言しました。民主党政権でもこの方針は維持されているのでしょうか?

ドラッグ・ラグを根本的に解決するためには、審査制度の見直しとともに、有効な薬であれば各国共通の認可を得て同時に発売する仕組み、ハーモナイゼーション(harmonization)、を進めることが重要だと思います。

上の記事のもう一つの注目点は、「併用した保険診療の保険適用は認める方向」という点です。現在は「混合診療の原則禁止」として、公的な健康保険で認められていない自由診療を一つでも受けると、併用した保険診療分まで全額自己負担となります。つまり、未承認薬を1つでも使用すると、その他の診療に保険が適用されなくなります。

この「混合診療の解禁」によって、大学病院などでの先進医療は、かなりやり易くなると思います。ところが、日本医師会は強く反対しています(医師会のサイトをみる)。以下は、医師会の主張です。


社会保障を充実させることは、国の社会的使命であることが日本国憲法にも規定されています。国が果たすべき責任を放棄し、お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあってはなりません。

医療は、教育などと同様に「社会的共通資本」であるという考え方を私たちは持っています。

医療が、国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強く持つものだからこそ、すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境でなければなりません。

健康保険の範囲内の医療では満足できず、さらにお金を払って、もっと違う医療を受けたいというひとは確かにいるかもしれません。しかし、「より良い医療を受けたい」という願いは、「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきです。

混合診療の問題を語るときには、「自分だけが満足したい」という発想ではなく、常に「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければならないと考えます。
混合診療は、このような考え方に真っ向から対立するものだからこそ、私たちは強く反対するのです。


本音は別のところにあるような気がします(関連ブログをみる)。

私は、「社会としてどうあるべきか」という視点に立っても、健康保険の財政状況や患者のニーズを考えれば、一部の医療機関で混合診療を解禁することは受け入れるべきだと考えます。

「混合診療解禁」に重点をおいたニュース報道

コメント

  1. Orphantoday より:

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    私は純粋な技術屋なので、単純に諸外国で使用されている技術や治療法を日本で試せる方法が
    増えるのであれば、それは認めた方がよいのではないかと考えています。
    実際には省庁の利権の問題などもあって、シンプルな議論で太刀打ちできるものではなさそうです。
    日本の国民保険は非常に恵まれていると思う一方で、
    それには当然大規模な財政負担が投じられているので、
    必然的に利権の大きさとは背中合わせになるのは仕方がないようにも思います。
    今回の記事もそうですが、論文紹介など、丁寧な内容のエントリーを書かれていて参考にさせていただいています。

  2. tak より:

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    >Orphantodayさん
    コメントありがとうございます。私も学問以外はあまり良くわかりませんが、社会的なことについても、自分の勉強のため、わかる範囲内で書くようにしています。
    今後ともよろしくお願い致します。

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