レムデシビル、重症患者向けに優先配分 厚労省が方針
以下は、記事の抜粋です。
新型コロナウイルスの治療薬として近く承認される見通しの抗ウイルス薬レムデシビルについて、日本への供給量が少なくなる恐れがあるため、厚生労働省は当面の間、国が薬の配分を管理し、重症患者を治療する医療機関に優先的に配る方針を示した。人工呼吸器をつけているなどの重症患者らの人数をもとに配る方針で、5月4日付で都道府県などにその方針を通知した。
厚労省はレムデシビルについて、国内の薬事承認の審査を簡略化できる「特例承認」の対象とした。製造するギリアド・サイエンシズ社の日本法人から4日に承認の申請が医薬品医療機器総合機構(PMDA)に出され、7日にも承認される見通し。
タイトルと記事の間に矛盾があります。記事には「重症患者を治療する医療機関に優先的に配る」とは書いてありますが、「重傷者向け」とは書かれていません。以下の記事をみると、重症になる前の初期段階の患者に使う方が良さそうです。
レムデシビル「初期患者に効果」 治験の米医師が報告
以下は、記事の抜粋です。
米国で新型コロナウイルスの治療に携わった感染症専門医が5月4日記者会見し、ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」の臨床試験(治験)などで得られた知見を公開した。特に発症から10日以内の患者で、呼吸の改善や解熱などの治療効果が見られたという。
ワシントン州エバレットの地域医療センターの感染症部門責任者を務めるジョージ・ディアス医師は、レムデシビルを使った臨床現場でのこれまでの治療実績などを説明した。
ディアス医師はレムデシビルの効果について、重症化前の患者では投与後の24時間に解熱や呼吸改善、症状の緩和などの効果が顕著に認められたと説明。多くのケースで患者が自宅療養に切り替えられたほか、死亡率の低下が認められたと説明した。
今後、レムデシビルの臨床使用の拡大が予想されることについてディアス医師は「むやみな使用拡大は、(薬が効かない)耐性菌の発現を招きかねない。賢い投薬判断が求められる」と警告。「感染拡大には、抑止効果が確認されている社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)を続けることが必要だ」と早まった外出制限緩和に警鐘を鳴らした。
レムデシビルはウイルスの増殖を抑制する薬です。重症患者でのサイトカインストームなどの症状は、ウイルスによって活性化された免疫反応が患者自身を攻撃する状態ですし、障害を受けた肺組織の再生に効果があるわけではないので、レムデシビルにはあまり効果が期待できません。「重症患者向けに優先配分」というのはおかしいと思います。
これは、同様にウイルスの増殖を抑制するアビガン(一般名:ファビピラビル)についても同じことが言えます。アビガンについては、開発者の白木氏が「抗ウイルス薬の中でも例外的に耐性ウイルスが生じず」と書いておられます(記事をみる)。理論的には、耐性が生じにくいことは理解できますが、これまで耐性菌が現れなかった薬はありません。特に特異的(ヒトへの副作用がなく、菌だけに効果がある)で強い作用を持つ薬には必ず耐性菌が出現しています。どの薬も、乱用は避け、手指消毒や手洗いなどの予防を中心とすべきだと思います。
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