老化を進める物質「オステオポンチン」から逃れる方法
ものすごく怪しい記事です。慶応大学の佐野氏が先日の記事の教授のように、意思に反して週刊現代に利用されているのかどうかわかりませんが、断片的な事実を無理矢理つなぎ合わせて、オステオポンチンを減らして老化を遅らせる方法(食事法)を解説しているようにみせかけた記事です。以下は、その抜粋です。
世界中の研究者が、いま、競い合うように「老化」の研究を進めている。そんななか、その原因となるひとつの物質が見つかった。
「老化を進める原因物質のひとつが、オステオポンチンであることは間違いありません。まだ研究の途上で、仮説段階ではありますが、今後、このオステオポンチンを人為的に減らす技術を開発することができれば『若返り』も可能だと考えています」(慶應大学の佐野准教授)
昨年4月、医学系専門誌『Clinical Chemistry and Laboratory Medicine 』に、驚くべき疫学研究の論文が掲載された。ニューヨーク大学のFabian Sanchis-Gomar博士らによるものだ。
研究の内容は、100歳を超え、かつ大きな病気を抱えていない「健康長寿」のグループと、一般の70代のグループとの間で、血中のオステオポンチンの量を比較するというものだった。
これまでの研究によれば、慢性炎症は、動脈硬化の他に、糖尿病、がんなどの発症にも関係していることが明らかになっている。さらに、認知症にも慢性炎症が影響を与えており、抗炎症薬を用い、アルツハイマーの症状を抑制できるという研究も発表されている。
まとめれば、異常化した細胞によって血中のオステオポンチンが増え、それが慢性炎症を引き起こし、体の老化につながる。そのために様々な疾患が体に出てくるということだ。
しかし、加齢によってオステオポンチンの分泌量が増えるのであれば、私たちには、まったく対策の打ちようがないのではないか。必ずしもそうではない。実は、前出の佐野氏は、加齢とは別に、生物の体の中でオステオポンチンを増加させている要因を発見したのである。
実験の内容はこうです。一方に、ラードをたっぷりと含んだエサを食べさせ内臓脂肪をつけたマウスを、もう一方に脂肪分の少ない通常のエサを食べさせたマウスを準備し、両者を比較します。すると、通常のエサを食べさせたマウスの内臓脂肪にはほとんど存在しない、異常化したTリンパ球が、太ったマウスの内臓脂肪からは大量に見つかった。そしてその異常化したTリンパ球がオステオポンチンを分泌していたのです。
たとえ若い人であっても、内臓脂肪が多い人は、オステオポンチンの分泌量が多くなっていると考えられる。もちろん自覚症状はない。日々の生活習慣によって身についた内臓脂肪が、ゆっくりと、しかし、確実に体にダメージを与えていく。だが、裏を返せば、内臓脂肪をきちんとコントロールして増やさないようにすることによって、私たちはオステオポンチンの分泌量を増やさずに済む、ひいては老化を防げるということだ。
では、そのほかに内臓脂肪を増やさない食べ物にはどんなものがあるのか。管理栄養士の麻生れいみ氏が解説する。…以下省略。
管理栄養士さんが登場した後は、内臓脂肪を減らすには、背の青い魚や食物繊維が良いという月並みな話です。、以下のような表までついています。
しかし、これらの食べ物を食べればオステオポンチン(一部のヒトには名前が受けているようです)が減るという証拠はありません。以下に、この記事の問題点をあげて行きます。
最初に紹介された「驚くべき疫学研究の論文」ですが、タイトルは”Galectin-3, osteopontin and successful aging”です(論文をみる)。論文要約から分かるように、100歳以上まで生きたヒトで減っているのはオステオポンチンだけではなく、ガレクチン-3もです (galectin-3: 2.4±1.7 vs. 4.8±2.8 ng/mL; osteopontin: 38.1±27.7 vs. 72.6±33.1 μg/mL).
また、佐野氏らの論文もラードを無理やり多く食べさせて内臓脂肪が増えたマウスの「Tリンパ球がオステオポンチンを分泌していた」事実を報告しているだけです(論文をみる)。
これらの結果から「サバやサンマを食べるとオステオポンチンが減って老化が防止できる」と結論するのはやり過ぎだと思いませんか?確かに、内臓脂肪が多いのは長寿にとってリスクかもしれませんが、それだけの話にオステオポンチンを絡めてここまで書くとはさすが週刊現代です。目をひく見出しで購買をそそる手口はスポーツ新聞と変わりません。
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