自閉症スペクトラム障害(ASD)にかかわる遺伝子座の極端な不均一性と多様性

自閉症の遺伝学的不均一性

以下は、記事の抜粋です。


自閉症スペクトラム障害(ASD)には遺伝的特性が強くかかわっていると広く考えられているが、この病態の基盤となる原因はほとんど解明されていない。今回3つの研究グループが、散発性ASD患者とその両親やASDでない兄弟を多数含めた、大規模なエキソーム塩基配列解読研究の結果を報告している。

これら3つの論文を総合すると、自閉症患者間には極端な遺伝子座不均一性が見られ、ASDにかかわる遺伝子は数百個に上り、どの遺伝子を見ても、かかわっている症例はごく一部に過ぎない。

Sandersたちは、以前にてんかん症候群で同定された遺伝子SCN2Aと自閉症リスクとの関連を明らかにした。Nealeたちは、CHD8とKATNAL2が自閉症のリスク因子であることを示す強力な証拠を見つけた。O’Roakたちは、変異しているタンパク質の大部分が、β–カテニンシグナル伝達系やp53シグナル伝達系などの基本的な発生経路で重要な役割を担うタンパク質であることを明らかにしている。


Sandersたちの論文タイトルは、”De novo mutations revealed by whole-exome sequencing are strongly associated with autism”です(論文をみる)。Nealeたちの論文タイトルは、”Patterns and rates of exonic de novo mutations in autism spectrum disorders”です(論文をみる)。O’Roakたちの論文タイトルは、”Sporadic autism exomes reveal a highly interconnected protein network of de novo mutations”です(論文をみる)。

Sandersたちは、928人の患者を対象に全エキソーム塩基配列解析を行い、脳で発現する遺伝子の非常に破壊的なde novo変異が、ASDと相関していることを示しました。Nealeたちは、ASD症例とその両親の3人組( n =175組)のエキソームの塩基配列を解読しました。ASD感受性遺伝子候補の同定とともに、リスクに寄与するde novo事象は、多くの遺伝子に散らばっていることも発見しました。

O’Roakたちも同様の全エキソーム解析をおこなっていますが、de novo点突然変異は圧倒的に父系起源である(4:1の偏り)ことと、父親の年齢と正の相関があることを明らかにし、父親の年齢が高い子供のほうがASD発症リスクが少し高い事実と一致すると報告しています。

これらの結果は、ASDにかかわる遺伝子座の極端な多様性を示しており、その原因治療が極めて困難であることを示唆しています。

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