肥満症治療薬「ロルカセリン」、FDA諮問委が承認を勧告

エーザイの肥満症治療薬「ロルカセリン」、FDA諮問委が承認を勧告
以下は、記事の抜粋です。


米食品医薬品局(FDA)の専門家諮問委員会は、エーザイと提携した米アリーナ・ファーマシューティカルズ(Arena Pharmaceuticals)の肥満症治療薬「ロルカセリン」の承認を勧告することを決定した。

諮問委は18対4で承認勧告を決定した。FDAは、諮問委の勧告に従うのが通例。諮問委の決定で、「ロルカセリン」は認可に向けて前進したことになる。

FDAは2010年10月、「ロルカセリン」に発がん性リスクがあるとして申請を却下。アリーナは追加データを付与して再申請していた。諮問委メンバーからは、副作用に関する懸念が示されたが、大半のメンバーが、承認後の研究調査で対応可能と判断した。FDAは6月27日までに最終決定を下す予定。


FDAの諮問委員会は本年の2月22日、Vivus社の抗肥満薬Qnexaの承認を推奨しました(記事をみる)。この推奨を受けて、Vivus社はQnexaが承認されるのを待っているところです。Qnexaは、中枢刺激薬フェンテルミン(phentermine)と満腹感を増やすトピラメート(topiramate)という古い2つの薬物を組み合わせた徐放剤です。

フェンテルミンは、、日本で唯一承認されている食欲抑制薬マジンドール(Mazindol、商品名:サノレックス)と同様、構造的にも薬理学的にも覚せい剤(アンフェタミン類)と類似しています。しかし、FDAの承認は既に受けています。トピラマート(商品名:トピナ)は、日本でも市販されている抗てんかん薬です。体重減少がその副作用の一つで、抗肥満薬としてはメリットになります。その他の副作用としては、眠気などがありますが、アンフェタミン類との併用で抑制されるようです。Qnexaの問題は、習慣性と心機能リスクです。

ロルカセリンは、視床下部のセロトニン5-HT2c受容体を刺激して、食欲や代謝を調節するといわれています。同じセロトニン5-HT2c受容体アゴニストのダイエット薬としては、フェンフルラミン(Fenfluramine)という薬物が過去に米国で商品化されていましたが、1997年に心臓弁膜症疾患の原因となることが米国医学誌の研究論文に発表された後、FDAの指導により市場から回収されました。
フェンフルラミンの心臓弁膜症(逆流)のリスクは、心臓弁に豊富に存在するセロトニン5-HT2b受容体の刺激によるといわれています。ロルカセリンにも5-HT2b受容体刺激作用があるそうですが、今のところは心臓弁関係の問題は発生していません。

ロルカセリンは、元々はアメリカのArena Pharmaceuticalsというバイオ製薬会社により創薬されました。本剤のFDAへの申請は2009年12月にArena社から提出されており、承認取得後は、エーザイのアメリカ子会社が米国において独占的販売を行うことになるそうです。

動物実験でロルカセリンによる乳がんの発生リスクが指摘されたために、FDAは昨年11月、申請データに加えて、ラットの癌原性試験に関する安全性データと当時に進行中だった2型糖尿病を持つ肥満症・過体重患者を対象とした臨床試験の最終報告を提出するよう求めました。その結果が、今回の承認の勧告につながりました。

抗肥満薬については、以前の有害事象のためか、10年以上も新規抗肥満薬は認められませんでしたが、今年になって状況が変わってきたようです。即ち、Qnexaに続いてロルカセリンも承認される可能性が高くなりました。それだけ、アメリカにおける肥満は大きな社会問題になっているのかもしれません。

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