「しっとり肌」保つたんぱく質を発見?

「しっとり肌」保つたんぱく質を発見 研究所チーム

以下は、記事の抜粋です。


皮膚の表皮細胞同士をぴったりくっつけて水分の蒸発を防ぎ、「しっとり肌」を保つたんぱく質を、生理学研究所のチームが突き止めた。温度を検知するセンサー役のたんぱく質がこうした「皮膚のバリア機能」も担っていた。冬の乾燥肌は、皮膚の温度低下でこのたんぱく質の働きが悪くなることも要因と考えられ、肌荒れや皮膚病の改善法の開発につながる可能性がある。

同研究所の曽我部隆彰助教、富永真琴教授らは温度センサーとして知られるたんぱく質「TRPV4」に注目し、このたんぱく質をもたないマウスを調べた。すると、皮膚の表面の細胞同士の結合が異常になってすき間ができ、皮膚からの水分蒸発が大幅に増えていた。

このたんぱく質にはカルシウムを細胞に取り込む働きもある。チームは、細胞に取り込まれたカルシウムが別のたんぱく質を介して細胞同士の結合にかかわっていることも突き止めた。成果は米専門誌に発表する。


元論文のタイトルは、”The TRPV4 channel contributes to intercellular junction formation in keratinocytes”です(論文をみる)。以下は、論文の要約です。


Transient receptor potential vanilloid 4 (TRPV4)チャネルは、低浸透圧、機械的刺激、あたたかい温度などの生理的センサーである。チャネルが活性化されると細胞内カルシウム濃度の変化を介した様々な現象がおこることが知られている。

研究者らは、TRPV4が細胞間接着に重要な役割をはたすβカテニンと相互作用し、細胞間接着の発達を増強、皮膚のケラチノサイト間のタイトなバリアー形成に働くことを示した。

また、TRPV4ノックアウトマウスは、皮膚で働く細胞間接合依存的なバリアーに障害があることを示した。さらに、TRPV4を欠損したケラチノサイトでは、細胞外カルシウム刺激によっておこるアクチン再配列と層構造の形成が遅れることを示した。これらは、細胞内カルシウム濃度の上昇と低分子量GTP結合タンパク質であるRhoの活性が阻害されたためだと考えられる。

TRPV4タンパク質は、細胞間接合領域に局在し、その欠損によって、異常な細胞間接合構造が生じ、インビトロでの細胞間透過性が高くなった。

これらの結果は、皮膚上皮細胞における細胞間接合の発達と成熟におけるTRPV4の新しい機能を示唆している。


TRPV4を活性化するあたたかい刺激は、皮膚のバリアー形成を促進するそうですので、寒いところで肌がカサカサになるのと関係があるのかな?などども思いますが、本当にバリアー機能と「しっとり肌」が関連があるのか怪しい気もします。

新聞記事の書き方では、TRPV4自身がバリアーを形成しているような誤解を与えます。もちろん、その可能性もありますが、TRPV4は、カルシウム流入によるRhoの活性化を介して、間接的に細胞間接着に貢献しているようです。

それにしても、「しっとり肌を保つたんぱく質」とは、すごいキャッチコピーですね。ここまでしないとマスコミは報道してくれないのでしょうか?

参考記事
ヘビが赤外線を「感じる」メカニズムが明らかに

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