点滴死傷 懲役10年判決、病理医鑑定の信憑性について

点滴死傷 懲役10年判決 母の犯行 強く非難

以下は、記事の抜粋です。


娘3人の点滴に水道水などを混ぜて死傷させたとして傷害致死罪などに問われた高木香織被告(37)に、懲役10年の実刑が下された。

5月20日、京都地裁であった裁判員裁判の判決。9日間に及ぶ日程の末に出されたのは、「実の子どもに対する極めて危険で常習的な犯行。通常の傷害致死事件より強い社会的非難を受けるべきだ」との厳しい内容だった。

裁判員経験者らは判決後の記者会見で、量刑をどう判断するか苦悩したことを打ち明けた。

公判では、死亡した四女(当時8か月)が重篤になって以降も異物混入を続けたかどうかが情状面での争点になり、被告は「注入していません」と否定していた。

しかし判決は、混入を続けたとする病理鑑定医の証言は信用できるとし、「被告は不合理な弁解をするなど、自分の行為の重大性を真摯に受け止めているとは認められない。反省は十分ではない」と指弾した。


量刑の軽重やミュンヒハウゼン症候群についてではなく、新聞記事をもとに、四女の医学所見について考えてみたいと思います(一部を太字で強調しました)。

別の毎日新聞の記事は、「閉廷後、9日間に及ぶ長期日程を無事終えた4人の裁判員らが会見に応じ『評議を十分に尽くせた』と安堵(あんど)の表情を見せた。4人は医学的な知識がない人ばかり。検察側は裁判員を審理から置き去りにしないよう、医療用語集を配布するなど工夫を凝らした。女性裁判員は『説明が分かりやすく、9日あったからこそ医学用語も十分に理解できた』と話した。」と書いています(記事をみる)。

また、時事通信の記事は、「補充裁判員を務めた男性は『当初は医学用語が全く理解できなかったが、検察官が配布した医療用語集や資料のおかげで、審理や評議をしているうちに理解できた』と話した。」と書いています(記事をみる)。

抜粋した記事に書かれているように、四女が重篤になって以降も異物混入を続けたかどうか、その異物混入が直接の死因であったかどうかが争点になったようです。そして、検察側の証人である病理鑑定医の「混入を続けた」という結論が全面的に認められ、被告の「注入していません」という発言は認められませんでした。

しかし、どうして4年前の病理標本とカルテだけをもとに、「混入を続けた」と断言できるのでしょうか?裁判員や裁判官が「大学教授」などの肩書きや「一見わかりやすい」医学的説明に惑わされ、根拠の弱い推論もすべて事実として認めてしまった可能性はないでしょうか?

病理鑑定医はあくまで検察側の証人です。弁護人は、「起訴前に検察側がする一方的な鑑定でなく、ニュートラルな鑑定が必要では」と問題提起しています(記事をみる)。私は、検討に値する問題だと思います。

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