心房細動に対するワルファリンの使い方、PPIとの薬物相互作用

先週の土曜日、「心房細動に対するワルファリンの使い方とカテーテルアブレーション」という講演を聴いてきました。その中で、「心房細動のある脳梗塞では、ワルファリンが第一選択であり、ワルファリンと比べてアスピリンの効果は明らかに劣る」という話がありました。

以下に、「脳卒中治療ガイドライン2009」の該当部分を抜粋・引用します。


再発予防のための抗凝固療法

1. 弁膜症を伴わない心房細動(NVAF)のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)患者の再発予防では、ワルファリンが第一選択であり、INRを2.0~3.0に維持することが推奨される(グレードA)。
5. ワルファリン禁忌例にはアスピリンが適応となるが、ワルファリンと比べてその効果は明らかに劣る(グレードB)。

再発予防のための抗血小板療法

(心原性脳塞栓症)
心原性脳塞栓症の再発予防は通常抗血小板薬ではなく抗凝固薬ワルファリンが第一選択薬である(グレードA)、ワルファリン禁忌の例にのみアスピリンなどの抗血小板薬を投与する(グレードB)。

(非心原性脳梗塞)
1. 非心原性脳梗塞の再発予防には、抗血小板薬の投与が推奨される(グレードA)。
2. 現段階で非心原性脳梗塞の再発予防上、最も有効な抗血小板療法(本邦で使用可能なもの)はアスピリン75~150mg/日、クロピドグレル75mg/日(以上、グレードA)、シロスタゾール200mg/日、チクロピジン200mg/日(以上、グレードB)である。


上記で「グレードA」は最上位のグレードで、「グレードB」よりも、臨床試験などによるエビデンスが強いことを示しています。

ワルファリンは、ビタミンKエポキシド還元酵素複合体を阻害し、活性型凝固因子の生成を抑制することで抗凝固作用を発揮します。

心房細動では、左心房の壁運動低下、痙攣様の動きや拡張などにより、血流のうっ滞を招き、血栓が形成されやすくなります。このような状況では凝固系の抑制薬であるワルファリンの投与が有効ということです。一方、アスピリンは、動脈硬化による血栓に有効だとされています。

以上は、演者の話で、以下はスポンサーのエーザイの話です。

ワルファリンは、ほとんどが肝代謝を受けます。ワルファリンにはS体とR体という光学異性体があり、S-ワルファリンはR-ワルファリンの5倍の抗凝固活性をもちます。S-ワルファリンはCYP2C9で主に代謝され、R-ワルファリンは主にCYP1A2、2C19、3A4で代謝されます。

R-ワルファリンがCYP2C19で分解されるので、同じCYP2C19による分解が主であるオメプラゾールやランスプラゾールとの間で薬物相互作用がおこるが、CYP2C19遺伝子多型の影響をうけないラベプラゾール(商品名:パリエット)は、ワルファリンと一緒に使っても大丈夫という話でした。

以下は、私の意見です。

しかし、ワルファリンの使用時にはPT-INRを測定することや、ワルファリン代謝ではCYP2C19が中心でないことを考えれば、CYP2C19の遺伝子多型はワルファリン投与に大きな影響はないと思います。

一方、クロピドクレル(商品名:プラビックス)は、CYP2C19によって代謝されてはじめて活性をもちます。約5人に1人の日本人(アジア人)では、CYP2C19活性が欠損しており、活性代謝物をつくることができず、クロピドクレルは効きにくいことが知られています。

オメプラゾールやランスプラゾールは、薬物相互作用のためにクロピドクレルの作用を減弱させてしまうので併用すべきではないが、ラベプラゾールは大丈夫という話をした方が良いと思いました。クロピドクレルが他社製品なのでダメなのかもしれません。

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