人工生命、完成見えた 米研究所、ゲノム合成し人工細菌
以下は、記事の抜粋です。
自己増殖をする「人工細菌」を作ることに、米のチームが初めて成功した。DNAをつないで、ゲノムを人工的に作った。生命の設計図であるゲノムが働くことが確認でき、「人工生命」ともいえる成果だ。医薬品づくりなどに役立つ技術と期待される一方で、安全性の確保や悪用防止が課題になる。生命とは何かを問うことにもつながりそうだ。
作ったのは、人間のゲノム解読に携わったクレイグ・ベンター博士が代表を務める研究所のチーム。遺伝情報にあたる塩基配列が少なく、操作しやすい「マイコプラズマ・マイコイデス」という細菌をモデルにした。
この細菌のゲノムをまねて、ゲノムを構成するDNAの断片を化学合成した。これを大腸菌などの中で1本につなげて、人工ゲノムを作った。この人工ゲノムを、ゲノムを除いた別種の細菌の細胞膜を器にして、移植した。
人工ゲノムは14の遺伝子が欠けていたものの、「人工細菌」は、モデルにした細菌と同じたんぱく質を作り、自己増殖を繰り返すことも確認できたという。この成果は、5月21日付の米科学誌サイエンス電子版で発表される。
元論文のタイトルは、”Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome”です(論文要約をみる)。
ベンター氏のグループは、1995年にMycoplasma genitaliumの全ゲノム配列を決定しました。M. genitaliumは、実験室内で自己増殖できる生物として最小のゲノム(580 kb)をもち、485のORFの中100個以上を同時に破壊しても生育可能です。
次にベンター氏らは、数kbのDNA断片を試験管内の酵素反応と酵母の中での反応を組み合わせて、完全合成した580kbのM. genitaliumゲノムを、プラスミド中に安定して保持する出芽酵母を増殖させることに成功しました。
さらに、酵母中で増やした合成DNAをレシピエント細胞に移植する方法も開発しました。また、M. genitaliumの増殖が遅すぎるので、ドナーは同じマイコプラズマのM. mycoidesに、レシピエントはM. capricolumに変更しました。この他にも、メチル化処理などの問題を解決し、ついに完全合成DNAをもつ自己増殖可能な細胞をつくることに成功しました。
ベンター氏によると、15年の歳月と4000万ドル、そして20人の努力の結晶だということです。
今回できたものは、人工細菌というよりも、M. mycoidesのコピーですが、大きな可能性を感じます。Synthetic Genomics Inc. ベンター博士の新たな挑戦に書きましたが、私はベンター氏のファンです。彼の宣言どおり、ポジティブな研究が爆発的に進み、石油をつくる人工細菌ができることを楽しみにしています。
以下は、「人工生命」を報じるニュースとベンター氏のコメントです。
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