バイオ工学によって作成した機能的歯ユニットを用いる成熟臓器置換再生治療

歯:組織培養、マウス使い初の成功--理科大チーム

以下は、記事の抜粋です。


歯の元になる細胞から歯周を含めた歯の組織を培養し歯茎へ移植することに、東京理科大などのチームが、マウスを使って世界で初めて成功した。「歯科再生治療」の実現につながる基礎技術。7月13日の「プロスワン」に発表した。

理科大の辻孝教授のチームはこれまで、胎児マウスから歯の元になる細胞(歯胚)を取り出して歯茎に埋め込み、歯を再生することに成功している。今回は、マウスの胎児から「上皮細胞」「間葉細胞」を集めて歯胚を培養し、別のマウスの腎臓皮膜下に埋めて成長させた。腎臓皮膜下は血流量が豊富で、放っておくと歯が伸び続けるため直径2.5ミリの円柱状のプラスチックで囲んで長さを調整した。

60日後には十分な硬さのある再生歯と、歯を支える「歯槽骨」や「歯根膜」など歯周組織を含む「再生歯ユニット」が完成。歯茎に移植すると、あごの骨とつながり、口に物が入った時に異物を感じる神経や血管も入り込んだという。

人間に応用するには歯胚の元になる細胞を調達する方法や、体に負担をかけない培養方法なども開発する必要がある。辻教授は「インプラント(人工歯根)が打てない小児などの患者の治療にも生かせるかもしれない」と話している。


元論文のタイトルは”Functional Tooth Regeneration Using a Bioengineered Tooth Unit as a Mature Organ Replacement Regenerative Therapy”です(論文をみる)。

この記事をみて、「歯周病でダメになった歯をなんとかしてくれることを(iPS細胞の)山中先生に期待している。」と私の友人が以前言っていたのを思い出しました。その時はあまり深く考えず、「それは無理だろう」と答えたのですが、この論文を読んで、少なくとも彼の歯の治療には再生医療が間に合わないことを確信しました。

本研究では、歯胚(tooth germ)を特殊な入れ物で育てることで歯の形を整えるところがミソのようです。出来上がった歯ユニットを歯槽骨の穴に移植すると神経もうまく再生したそうです。友人が助かるためには、若いマウスでうまく行ったことが高齢のヒトでうまく行くか?記事にあるようにヒトの歯胚をどう確保するか?などが越えなければいけないハードルだと思います。このままの方法でうまく行ったとしても、新しい歯1本につき100万円以上は用意してもらう必要があるでしょう。

バイオ工学による機能的歯ユニットの作成(PlosOneより)。

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