変形性関節症における転写因子HIF-2αの役割

特定タンパクが軟骨破壊 変形性関節症

以下は、記事の抜粋です。


脊椎や手足の関節が変形し、歩行障害などの症状が出る変形性関節症は、軟骨細胞に存在する特定のタンパク質によって軟骨が破壊されたり骨になる「骨化」が異常に起きたりするのが原因との研究結果を、川口浩東京大准教授(整形外科)らが5月23日付米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。

こうした仕組みを標的にすることで、治療薬開発につながるのではないかという。

骨ができる過程では、成長板という軟骨が壊れて骨に置き換わる「軟骨内骨化」という現象が起きる。変形性関節症では成人の関節で、そのままであるべき軟骨に異常な骨化が起きると考えられている。

川口准教授によると、日本の変形性関節症の患者は2千万人以上と推定され、現在は消炎鎮痛剤の投与などの対症療法しかない。


元論文のタイトルは、”Transcriptional regulation of endochondral ossification by HIF-2α during skeletal growth and osteoarthritis development”です(論文をみる)。また、韓国グループの論文も同時に掲載されています。その論文のタイトルは、”Hypoxia-inducible factor-2α is a catabolic regulator of osteoarthritic cartilage destruction”です(論文をみる)。

川口氏らは、タイプXコラーゲン(COL10A1)のプロモーターに結合して発現を増強する因子を探索し、低酸素で活性化されることが知られている転写因子HIF-2α (hypoxia-inducible factor-2α、EPAS1遺伝子によってコードされる) を同定しました。そして、HIF-2αが軟骨の骨化に重要であることや変形性関節症の軟骨組織で発現が亢進していることを発見しました。また、EPAS1におけるSNPがひざ変形性関節症に関連することを発見しました。

Jang-Soo Chun氏らは、病的な軟骨組織で高発現している遺伝子としてHIF-2αをコードするEPAS1を同定しました。川口氏らと同様、HIF-2αが変形性関節症の軟骨で高発現していることを発見するとともに、マウスなどでHIF-2αを人工的に高発現すると、軟骨破壊がおこることを示しました。さらに、EPAS1をヘテロでノックアウトしたマウスは、いろいろな軟骨破壊処置に抵抗性であることを示しました。

以上の結果は、HIF-2αを分子標的とする薬物の開発が変形性関節症の新しい治療につながる可能性を示しています。

HIF-2αは、20年以上前に発見された転写因子です。発現量ががん細胞の悪性度や放射線治療への抵抗性と相関することなどが明らかにされ、がん治療の分子標的の1つとしても研究が進んでいます。阻害薬の登場も期待できるかもしれません。

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