血中マイクロRNA(miR-21)レベルによる大腸がんの早期診断と予後判定

大腸がん 血液検査で判別…三重大グループ
以下は、記事の抜粋です。


三重大医学部の研究グループは7月3日、米国のベーラーメディカルセンターと共同で、血液検査で大腸がんや大腸ポリープの患者を高い確率で判別できることを突き止めたと発表した。

研究結果は米国の雑誌「JNCI」に掲載された。同センターが実用化を目指しており、三重大は「検査法が確立すれば、より早く大腸がん患者を診断できる」としている。

グループの問山裕二助教によると、大腸がん検診では便に混じる血液を調べる「便潜血検査」が行われるが、精度が問題となっていた。

グループは、血液に含まれる遺伝物質のうち、大腸がん組織から多く分泌される「マイクロRNA-21」に着目。健常者、大腸がん、大腸ポリープ患者の計約300人について、この物質の血液中の量を比較した結果、がん患者は健常者の約5倍、ポリープ患者は約3倍に上った。データ解析で、がん患者は92%以上、ポリープ患者は82%以上の確率で判別できることも分かったという。


元論文のタイトルは、”Serum miR-21 as a Diagnostic and Prognostic Biomarker in Colorectal Cancer”です(論文をみる)。マイクロRNA(miRNA)とよばれる低分子RNAは、遺伝子発現の制御などとの関連が注目されています。特に、miR-21とmiR-31 の2つはがん抑制遺伝子を負に制御していることが知られています。本論文はこれらのmiRNAレベルが大腸がんのマーカーになるかどうかを調べたものです。

その結果、miR-21の血中レベルは大腸がんとの関連が認められたけれども、miR-31については有意な関連は認められませんでした。具体定期には、検証コホートにおいて、アデノーマと大腸がん患者術前血清におけるmiR-21レベルはコントロールと比べて有意に高く、治療的手術後に低下したそうです。

さらに、血中および組織中のmiR-21レベルは、腫瘍サイズ、遠隔転移、不良な予後と有意な相関を示しました。さらに、血中miR-21レベルは大腸がんの独立した予後判定マーカーとして有効でした。これらの結果から、著者らは血中miR-21レベルが大腸がんの早期発見と予後判定の優れたマーカーであると結論しています。

Correspondenceは、Baylor University Medical CenterのAjay Goel氏です。私の個人的感想ですが、「数滴の血液だけで大腸がんを早期発見!」というメタボロミクス・バイオマーカー(記事をみるニュースをみる論文をみる)よりもかなり実用化に近そうです。

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