ガンの化学療法や抗体療法がかえって命を縮めている可能性についての研究

ガンの化学療法開始後30日以内に亡くなった患者さんの分析

以下は、記事の抜粋です。


ガンに対する化学療法などの副作用で命を縮めないかという疑問は全ての患者さんの最も重要な関心事だ。

今日紹介するイングランド公衆衛生局からの論文は、治療開始後30日以内に亡くなった症例を分析して、ガン治療の負の側面を、これまでのように個々の副作用にこだわらず、治療後の生存期間として見直した重要な研究だ。

英国では、外科治療や放射線のような局所治療以外の化学療法や抗体療法(システミック治療)は医療機関に報告義務が課され、治療法、医療機関、担当医、治療結果や副作用についてのデータベースが整備されつつある。

約23000人の乳がん、ほぼ1万人の非小細胞性肺がんについてのデータを解析した結果、化学療法を受けた乳がん患者さんの2%、肺がん患者さんの7%が治療開始後30日以内で亡くなっていた。 特に根治が難しいと判断され、病状を緩和する目的で治療を受けた場合、乳がんで7%、肺がんで10%が30日以内に亡くなっていた。

30日死亡率と相関する主な要因は、 1) 根治療法の場合、年齢が高いほど30日死亡率が高いが、症状改善の場合は若年者の方が死亡率が高い。 2) 以前に化学療法を経験した患者さんは30日死亡率が低い。 3) 一般状態が悪いと30日死亡率は上がる 4) 根治療法を行う肺がん患者さんの場合、肥満気味の方が30日死亡率が低い などだ。

もう一つ重要な発見は、30日死亡率が高い施設や団体が発見されたことで、がん登録の義務化とデータ開示が患者さんにとっていかに重要かを教えてくれる。


元論文のタイトルは、”30-day mortality after systemic anticancer treatment for breast and lung cancer in England: a population-based, observational study”です(論文をみる)。

簡単に言い切れないとは思いますが、治療して30日以内に死亡するということは、全身に影響を与える抗がん剤治療はしない方が良かった、という位置づけだと思います。

日本でも、同様のデータ蓄積と公表が行われるべきでしょう。その場合、根治をめざす施設の方が緩和ケア中心の施設よりも30日死亡率が高いことになるでしょうが、それをダメだと言えるのかどうか、難しい判断です。

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