ボルバキアで不妊化したネッタイシマカのオスの放出実験でデング熱の患者が激減しました

寄生細菌に感染させた蚊が感染症の流行を劇的に抑え込むことが判明
以下は、記事の抜粋です。


蚊はマラリアやデング熱といった数多くの病原体を媒介することから、「歴史上、人間を最も多く殺している生物」と言われています。ボルバキアという寄生細菌に感染したオスの蚊がボルバキアに感染していないメスの蚊と交配すると子孫が生まれなくなることを利用し、ボルバキアに感染させた蚊を放して蚊を減らす実験も行われています。

2021年6月10日に発表された新たな研究結果では、インドネシアのジョグジャカルタ市で行われた大規模な実験結果が報告されています。

研究チームは、ジョグジャカルタ市のうち無作為に選んだ12箇所でボルバキアに感染した蚊の群れを放ち、これとは別に無作為に選んだ12箇所ではボルバキアに感染していない蚊の群れを放つという、ランダム化比較試験を行いました。蚊が放たれたのは2017年3月から12月までの間。その後、2018年1月8日から2020年3月18日までの間に、研究チームは政府が運営するプライマルケアのクリニックで5万4000人の患者をスクリーニングし、8000人あまりを研究の参加者として登録しました。そして、このうち6306人を対象に「蚊がどのくらい病気を媒介したのか」を分析したとのこと。

分析対象となった6306人のうち、2905人はボルバキアに感染した蚊が放たれた12地域で暮らしており、残り3401人は対照群の地域で暮らしていました。

この結果、ボルバキアに感染した蚊が放たれた地域の住民は2.3%がデング熱を発症したのに対し、対照群の住民は9.4%でした。これは77.1%の防御効果があると言い換えることができます。またデング熱に関連し入院する割合の違いはさらに顕著で、ボルバキアに感染した蚊を放した地域の住民は0.4%、対照群の住民は3%だったとのことです。

研究チームは、この研究が「感染症を防ぐボルバキアの可能性を示した」と述べています。


元論文のタイトルは、”Efficacy of Wolbachia-Infected Mosquito Deployments for the Control of Dengue”です(論文をみる)。

以前の記事で、ボルバキアで不妊化したネッタイシマカのオスの蚊を放出することで、蚊の個体数が80%以上減ったことを紹介しました。今回は、デング熱に罹った患者の数もほぼ8割減ったという報告です。これらの結果からネッタイシマカとデング熱については有効そうです。問題は、コストですが、できれば、私の周辺にいるヤブカのオスもボルバキアで不妊化して欲しいと思います。

ネッタイシマカ

関連記事
ボルバキアで不妊化したオスの放出実験でネッタイシマカの個体数激減

コメント

タイトルとURLをコピーしました