がん治療薬オプジーボにおける重篤な副作用「重症筋無力症」の特徴が判明
以下は、記事の抜粋です。
オプジーボは、免疫機能を調節することで多くのがんに有効な薬で、広くがん治療に用いられている。一方、これまでの抗がん剤にはない副作用も報告されており、重症筋無力症もそのひとつだが、詳細はわかっていなかった。重症筋無力症とは、神経と筋肉のつなぎ目の部分に免疫の異常がおこる病気で、体全体の筋肉または部分的な筋肉が動かなくなる。通常は薬とは関係なく起こり、目だけに症状がある場合(眼筋型)から全身の筋肉に力が入らなくなる場合(全身型)まであり、呼吸ができなくなる場合(クリーゼ)が最も重篤となっている。
同研究では、オプジーボの副作用として知られている重症筋無力症の発生頻度が低いこと、しかし、発症した場合には重篤になる確率が高いため適切な診断と早期の治療が必要であることを明らかにした。同研究チームが、日本におけるオプジーボ販売後2年間の副作用報告を解析したところ、オプジーボを投与された9,869人のがん患者の中で、12人(0.12%)が重症筋無力症を発症し、このうち9人はオプジーボ投与開始直後、1回目または2回目の投与を行った後に発症した。症状は急速に進行し、薬と関係なく発症した重症筋無力症に比べて症状が重い場合が多く、9人のうち6人がクリーゼとなった。
元論文のタイトルは、”Nivolumab-related myasthenia gravis with myositis and myocarditis in Japan”です(論文をみる)。
2006年の全国調査では、重症筋無力症の有病率は人口10万人あたり11.8人だそうです(記事をみる)ので、オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)を投与された9,869人のがん患者の中で、12人(0.12%)が発症というのは、オプジーボ投与で重症筋無力症のリスクが約10倍に増えた計算になります。さらに、12人中2人が死亡6人がクリーゼとなったというのも厳しい数字です。
記事には書かれていませんが、この病気は末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側のアセチルコリン受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患です。論文によると12人中10人に筋肉側のアセチルコリン受容体に対する自己抗体が認められたそうです。
オプジーボ®は、腫瘍に対する免疫を賦活することが目的ですが、関連記事に紹介したように、別の自己免疫疾患である1型糖尿病の発症リスクも増えることが知られています。このような非特異的な免疫活性化を抑制することが今後の課題だと思います。
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