アビガン®(一般名:ファビピラビル)は本当に新型コロナウイルスによる肺炎に効くのか?

安倍首相は3月28日の記者会見で、感染が拡大している新型コロナウイルスの治療薬として、インフルエンザ薬「アビガン®」の正式承認に向け、治験プロセスを開始する考えを示しました(記事をみる)。藤田医科大病院や群馬大学医学部付属病院でアビガン®の臨床試験が始まって約1か月ですが、まだ結果は発表されていません。臨床試験が政治家に忖度する可能性はないでしょうか?ちょっと心配です。ところで、安部氏が強気なのは、以下の記事に書かれている中国での臨床試験の結果が日本のメディアで大きく報道されたためだと思われます。

以下の記事で根拠となった論文は、著者および/または編集者の要求により取り下げられました(論文のサイトをみる、4月3日ブログ著者)。

アビガン、7日で7割回復 軽症者に中国チーム
以下は、記事の抜粋です(臨床試験の結果の記載はすべて転載しています)。


「アビガン」が新型コロナウイルスに感染した肺炎患者の治療に有効だとする研究成果を中国・武漢大などのチームが3月23日までにまとめた。軽症者に限ると投与後7日以内の回復率が7割を超えた。

多くは4日間で症状が消えた。チームは「高血圧や糖尿病など持病がある人には、早期の症状改善が重要だ」として、有望な薬剤だとしている。中国は既にアビガンを政府の診療方針に採用することを表明している。

チームは2月から3月にかけ、同大病院など三つの病院で18歳以上の116人の患者に対しアビガンを投与。1日当たりの用量はインフルエンザ治療と同じにして、熱やせきなど症状が出てから12日以内に錠剤を飲んでもらった。

1週間後の状態でみると、98人いた比較的軽い患者では70人(71%)が、18人いた重症者の中でも1人が回復した。全体では61%の回復率だった。

副作用は37人で出たが、尿酸値の上昇や肝機能の数値の異常などで深刻なものはなく、退院時には正常に戻ったという。


元論文のタイトルは、”Experimental Treatment with Favipiravir for COVID-19: An Open-Label Control Study”です(論文をみる)。

記事には書かれていませんが、アビガン®(ファビピラビル)のコントロールは、最近効果がないことが報告された(論文をみる)カレトラ®(ロピナビル・リトナビル)です。アビガン群は35名、コントロール群は45名です。どちらにもインターフェロンαが投与されています。

この試験は、どんな治療を受けているかを患者さんや医療スタッフ全員が知った状態で行う試験で、非盲検試験です。通常、薬物の効果を調べるために行われる患者さんも医療スタッフも知らない状態で行われる二重盲検試験と比べるとエビデンスレベルは低いです。また、症例数も少なく、平均年齢はアビガン群が43歳、コントロール群が49歳、男性の比率はアビガン群が40%、コントロール群が46.7%で均等ではありません。

MedicalNewsTodayの記事でもあまりに少数の症例と小さな差しかないので、ちょっとしたことで結論は変わると疑いを述べています。新型コロナウイルスの場合、問題は軽症ではなく重症の患者を救えるかどうかなので、まだまだこんな臨床試験の結果で大喜びするわけにはいきません。いずれにしても、もっと多くの症例を用いた臨床試験が世界中で進行しているはずですので、有効かどうかの結論はすぐに出ると思います。

以下のようなNHKニュースもあります。結果も出ない時から政府が後押しとは?政府が後押ししても、治験担当者は忖度するかもしれませんが、薬は急に効くようにはなりません。副作用が出て被害を受けるのは国民です。
新型コロナ治療薬 「アビガン」承認へ研究後押しの方針 政府

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