以下は、記事の抜粋です。
統合失調症と双極性障害の間に遺伝的つながりがあることが新しい研究によって示された。これらの精神疾患のリスクにおいて重要な役割を果たす11の遺伝子領域が同定され、うち6つはこれまで発見されていないものであったという。
医学誌「Nature Genetics」9月18日号に掲載された今回の研究で、同氏らは、双極性障害患者7,481人および健常者9,250人のDNAを検討。また、もう1つの研究では、同大学精神医学准教授のShaun Purcell氏らが、統合失調症患者1万7,000以上を対象に同じDNA部位の評価を行った。
これら2つの研究の結果、特定の遺伝子におけるDNA variantとしても知られるいくつかのDNA部位が統合失調症および双極性障害と関係していることが判明した。一部の症例では、特定のvariantが両疾患と関連していた。Purcell氏は「この研究は、双極性障害と統合失調症の遺伝子構造の解明を始めるにあたり有用であり、治療法と患者のQOLを改善する新たな基盤となることを願っている」と述べている。
元論文のタイトルは、”Genome-wide association study identifies five new schizophrenia loci”(論文をみる)と”Large-scale genome-wide association analysis of bipolar disorder identifies a new susceptibility locus near ODZ4″(論文をみる)です。
統合失調症に関しては、ゲノムワイドに有意な関連を示す7遺伝子座位が得られました。このうちの5座位は新規で、残りの2座位は既知でした。最も強い関連は、神経発生の調節因子であると考えられているMIR137(microRNA 137)のイントロン内に見られました。他の4個の座位がMIR137の標的遺伝子の可能性があり、MIR137を介する調節異常の重要性が示唆されました。MIR137は神経細胞に多く、様々な標的遺伝子の3’非コード領域に働いて発現を抑制すると考えられています。
また、上の記事に書かれているように、双極性障害のサンプルとの共同 解析では、CACNA1C、ANK3、ITIH3-ITIH4領域の3座位がゲノムワイドな有意水準に達したそうです。つまり、これらが両疾患と関連していました。特に、L型電位依存性カルシウムチャネルをコードするCACNA1Cは双極性障害(躁鬱病)で最も注目されている座位の一つです。大昔に精神科の患者さんを診ていたときには、これら2つの病気に遺伝的な関連があることはとても想像できませんでした。このような発見が治療に結びつくことを期待したいと思います。
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