以下は、記事の抜粋です。
既存の薬との併用で、従来の治療では治りにくいウイルスを持つ人の治癒率が上がる新しい飲み薬「テラプレビル」の国内製造と販売を9月26日、厚生労働省が承認。年内に保険適用され、来年3月末までに販売される見通しとなった。
「テラプレビル」(商品名テラビック錠)は、肝炎ウイルスの増殖に関わる酵素プロテアーゼの働きを妨げ、ウイルスの増殖を抑える飲み薬。田辺三菱製薬が一月に厚労省に承認を申請した。
それに先立ち、従来の薬が効きにくいウイルスに感染している患者を対象にした治験が実施された。ペグIFNの注射と、抗ウイルス薬リバビリンの服用を48週間併用する標準的な治療で、ウイルスを体内から排除できる患者は49%。この二剤にテラプレビルを併用した場合、ウイルスを排除できた割合は73%に上った。しかも治療の初期に排除できる率が高く、治療期間は標準的な治療法の半分の24週間で済む。
国は2008年から肝炎患者に医療費を助成しており、IFN治療は原則月1万円で受けられる。テラプレビルの助成対象化に患者の期待は高い。厚労省は「薬価決定後、検討する」としている。
テラプレビルは、C型肝炎ウイルス(HCV)の増殖に必要なNS3-4Aプロテアーゼを直接阻害する抗ウイルス薬です。慢性HCV感染は、日本でも100-200万人が罹患しており、感染後何十年も経った後で、肝硬変や肝がんをおこすことがある感染症で、肝移植の最大の原因です。
プロテアーゼ阻害薬は上記のように、これまでに行われた国内外の臨床試験の結果によると、70-80%の患者の慢性C型肝炎を治癒させ、現在の非特異的な標準治療がせいぜい半分の患者にしか有効でないのに比べると、格段の進歩が期待されます。今は、2種類の薬(telaprevirとboceprevir)が先行していますが、今後は多くのメーカーから続々と出て来る予定です。患者にとっては朗報ですが、上の元記事や関連記事にも書かれているように、副作用や高コスト(患者一人あたり約170万円)などの問題はあります。
また、現在の患者数は多いですが、世界での衛生状態の改善によって新規患者は急激に減少しているので、今後は患者の高齢化とがん化予防がC型肝炎医療の課題になると思われます。
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