以下は、記事の抜粋です。
医学部誘致を公約とする茨城県の橋本知事が早稲田大学に新設医学部の誘致を打診したことについて、県医師会(斎藤浩会長)は9月21日、記者会見を開き、医学部の新設・誘致は不適当と批判した。斎藤会長は18日に知事に会い、「おやめなさい」と進言したことも明らかにした。
医学部の新設・誘致に反対する理由として、県医師会は「教員確保のために医師を集めれば全国の医師不足に拍車をかける」「既存医学部で入学定員の増加を図っている」「中小医療施設や有床診療所などの経営に影響する」「医学生は卒業後に出身地へ戻る可能性もあり県の医師不足解消にならない」の四つを挙げた。
県内の医師数(2008年)は人口10万人当たり162.1人で、埼玉県に次いでワースト2位。県北の医療圏は同90.9人と、偏在も問題になっている。医師確保を県の喫緊の課題とする橋本知事は、09年8月の知事選で医学部誘致を公約とした。
早大誘致を巡っては、橋本知事が6月下旬、鎌田総長に宛てて、医学部新設の際の県内立地を求める文書を提出。県立の医療施設が近接する笠間市の県畜産試験場跡地をキャンパス候補地に挙げ、教育、研究に各施設を活用してほしいとの協力姿勢を示している。
もしも早稲田の医学部が誘致できた場合、いくら「実学」が売りだといっても、地方病院に勤務する医師を集めて教員にすることはしないでしょう。既存の各大学、特に有名大学の准教授クラスの教員が若手の教員や医員を連れて異動するだけでしょう。これなら、たいした医師不足は起こらないと思います。ただ、学生も「優秀私学ブランド」を求めて受験するわけで、地域に留まって働く人は少ないでしょう。東北地方の医師不足には、プラスにもマイナスにもならないような気がします。
政治家がその場しのぎの公約やスタンドプレイをするのは仕方ないとしても、既得権益に執着しているとしか見えない茨城県医師会の知事批判は、マスコミの恰好の餌食となり、医師全体のイメージを悪くしていると思います。
一方、福島医大が放射線医療の拠点化を目指してまとめた復興ビジョンの概要では、330床の新医療センターなど5施設を5年以内に新設するとしています。県内のがん医療を国内最高水準に引き上げ、被ばく医療専門の医学講座を年内に設けて人材育成にも取り組むとしています。事業費約1千億円を想定し、県と一体で国の3次補正予算案に盛り込むよう求めているそうです(記事をみる)。
これが本当に震災後の復興につながるかどうかについて、小松秀樹はJMMのメールマガジンVol.277で「福島県立医大の計画は、(東北大学の)東北メディカル・メガバンク構想と同様、被災者の生活再建とは無縁です。復興予算の受益者は、福島県立医大ではなく、浜通りの被災 者であるべきです。日本では、火事場泥棒のような予算要求がこれまでも横行し、実際に認められ、発展を阻害してきました。」と批判しています。
「火事場泥棒」かどうかはわかりませんが、福島医大の計画にある「がん治療薬の開発―創薬・治験センターを新設する」は難しいと思います。以下に小松氏の意見を抜粋して引用します。
福島県立医大に、がん治療薬の開発が果たして可能でしょうか。過去、がん治療薬を開発したことがあるのでしょうか。そもそも、開発しようとしたことがあるのでしょうか。創薬の下地があるのでしょうか。どう考えても創薬は無理です。
日本の製薬メーカーにとって、膨大な費用がかかる新薬開発は難しくなっています。世界のメガファーマが、許認可を含めて開発環境の悪い日本で、しかも、研究実績が高いとは言えない福島県立医大と協力関係を結ぶとは思えません。
残念ながら、かなりあたっていると思います。ところで、早稲田が神戸に医学部を作るという話を去年聞いたような気がするのですが、あれはどうなったのでしょうか?
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