眼瞼黄色腫と角膜環の虚血性心疾患および死亡におけるリスク予測因子としての意義

Xanthelasmata, arcus corneae, and ischaemic vascular disease and death in general population: prospective cohort study

以下は、論文要約の抜粋です。


目的:眼瞼黄色腫(xanthelasmata)および角膜環(arcus corneae)が虚血性血管疾患と死亡の予測リスクであるという仮説を検証する。

方法:20-93歳のデンマーク人1万2745人を対象として、1976-8年から2009年5月まで、100%をフォローする前向きコホート研究を行った。追跡開始時には虚血性血管疾患を持たないものを対象とした。主要アウトカムは、心筋梗塞、虚血性心疾患、虚血性脳卒中、虚血性脳血管疾患、死亡および重症動脈硬化とした。

結果:調査開始時において、参加者中563例(4.4%)が眼瞼黄色腫を持っており、3159例(24.8%)が角膜環を持っていた。33年間のフォローアップ(平均22年)において、1872名が心筋梗塞、3699名が虚血性心疾患、1498名が虚血性脳卒中、1815名が虚血性脳血管疾患を発症し、8507名が死亡した。眼瞼黄色腫を持つ例と持たない例の危険オッズ比は、心筋梗塞が1.48、虚血性心疾患が1.39、虚血性脳卒中が0.94、虚血性脳血管疾患が0.91、重症動脈硬化が1.69、死亡が1.14だった。角膜環を持つ例については持たない例との間に有意差はなかった。男女すべての年齢グループにおいて、眼瞼黄色腫を持つ場合、心筋梗塞、虚血性心疾患および死亡の絶対10年リスクが増加した。

結論:眼瞼黄色腫は、心筋梗塞、虚血性心疾患、重症動脈硬化および死亡のリスクの予測因子で、高脂血症など他の良く知られた心血管リスクとは独立している。一方、角膜環はリスク予測因子としては重要ではない。


心筋梗塞の場合オッズ比が1.48なので、眼瞼黄色腫をリスク予測因子としても良いと思いますが、死亡については1.14ですので、統計上では有意だとしても予測因子にするのは少し無理がある様に思います。

一番抵抗を感じるのは、”We have shown that xanthelasmata predict increased risk of myocardial infarction, ischaemic heart disease, and total death independently of well known cardiovascular risk factors, including plasma cholesterol and triglyceride concentrations.”の”independently”です。著者らもxanthelasmataの原因は高脂血症だと認めているのですから、「独立」ではなく「従属」でしょう。高脂血症であれば心血管リスクが高いのは当然だと思います。

論文によると、眼瞼黄色腫群も角膜環群もコントロール群よりも、総コレステロール値、LDL値、中性脂肪値が有意に高かったそうです。

角膜環は予測因子ではないと結論していますが、40-50歳以下で認められる場合は「若年環」とよばれ、これも高コレステロールを反映していると考えられています。高齢者で普通にみられる「老人環」は、おそらく血中コレステロールや動脈硬化との関連が弱く、一緒にして解析することでリスクが薄められたのではないかと思われます。というわけで、「角膜環は予測因子ではない」と言い切るのにも抵抗を感じます。

ところで、デンマークのような先進国でも眼瞼黄色腫がきっかけで高脂血症が発見されることがあるのでしょうか?m3.comの「医療ジャーナル」でアクセス・ランキング1位の論文でしたが・・・・

眼瞼黄色腫(左)と角膜環(右)

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