ビスホスホネート使用と高齢女性における大腿骨転子下および骨幹部骨折リスク

Bisphosphonate Use and the Risk of Subtrochanteric or Femoral Shaft Fractures in Older Women

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:ビスホスホネートは骨粗鬆症の中心的治療になっているが、その長期使用に伴い、骨リモデリング抑制による異常骨折が懸念されている。

目的:ビスホスホネートの長期使用が大腿骨転子下および骨幹部骨折リスクを上昇されるかどうかを調べる。

方法:カナダ、オンタリオ州において、2002から2008年の間に経口ビスホスホネート剤の服用を開始した68歳以上の女性を対象とした。対象は、大腿骨転子下および骨幹部骨折で入院治療を受けたものとし、5倍のコントロールとマッチさせ、2009年までフォローアップした。また、骨折の特異性を調べるために、典型的な骨粗鬆症で生じる大腿骨頚部と転子間の骨折も調べた。

結果:ビスホスホネート治療開始後に大腿骨転子下および骨幹部骨折で入院した716例と骨粗鬆症による骨折した9,723例の女性を特定した。短期間のビスホスホネート使用者と比べて、5年以上使用した患者では、大腿骨転子下・骨幹部骨折リスクの上昇が見られた(調整オッズ比2.74)。しかし、大腿骨転子下・骨幹部骨折の絶対リスクは低く、ビスホスホネート治療を5年以上続けた52,595例の高齢女性においても、6年目に71例(0.13%)、7年目までに117例(0.22%)発症しただけだった。一方、5年以上使用した患者の骨粗鬆症性骨折リスクは低下した(調整オッズ比0.76)。

結論:ビスホスホネートを5年以上使用している高齢女性では、大腿骨転子下・骨幹部骨折リスクの上昇が認められた。しかし、この絶対リスクは低い。


骨粗鬆症は、加齢、閉経などが原因で骨のカルシウム量が減少し、骨が脆くなり骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症の日本での患者数は、1000万人を超え、70歳を超えた女性の約50%が骨粗鬆症だと推定されています。

骨粗鬆症治療薬には、ビスホスホネート製剤(BP)・女性ホルモン製剤・活性化ビタミンD・選択的エストロゲン受容体作動薬などがありますが、BPが最も有効で、BPを1年間飲むと、骨折の発生率は約半分になったという報告があります。

BPは、体内に吸収されると大半がカルシウムの多い骨組織に集積します。集積したBPは、破骨細胞に取り込まれます。取り込まれたBPは、破骨細胞の細胞死(アポトーシス)を誘導するなどして、破骨細胞機能を抑制すると考えられています。

このように現在骨粗鬆症治療薬として最も使用されているBPですが、顎骨壊死などの急性の副作用以外にも長期使用による副作用もあるとされています。その1つが、この論文で調べられた骨リモデリング障害による異常骨折です。

コホート研究ですので、交絡因子が影響している可能性は否定できませんが、例数も多く、骨粗鬆症による骨折は抑制するというデータが同時に得られたので、結果はある程度信頼できると思います。つまり、BPを5年以上長期服用すると大腿骨転子下・骨幹部骨折リスクが上昇するということです。

しかし、論文でも強調されているように、骨粗鬆症による骨折と比べるとその絶対リスクは極めて低いので、5年以上使用する場合のベネフィットとリスクの判断は難しいと思われます。5年以上使用する場合、ドラッグホリデーを設ければ異常骨折のリスクが低下するかどうかが知りたいところです。

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