オンライン診療でインフルエンザと診断してよいか?
以下は、記事の抜粋です。
インフルエンザ流行るぞ!という意見が台頭してきました。新型コロナ第8波とインフルエンザ流行がかぶると、発熱外来の逼迫は必至です。そのため、政府としても、医療が必要な人以外はできるだけ病院に来ないよう策を講じる必要がありました。ここで示されたのが、「新型コロナ自己検査+インフルエンザオンライン診断」の流れです1)。病院に来なくても、新型コロナとインフルエンザが診断できる「かもしれない」、というスキームです。
具体的には上の図のようになります。オンライン診療というのが結構カッコイイ感じになっていますが、Zoomなどの診療を整備している施設は少数派で、実際には電話診療が多いと思います。電話って個人的には「オンライン」じゃなくて「オフライン」だと思っているのですが…。
さて、このフローで気になるのは、検査なしでオンライン診療によるインフルエンザの確定診断が可能という点です。必要があれば、オセルタミビルなどのインフルエンザ治療薬を遠隔で処方することができます。
確かにインフルエンザは、(1)突然の発症、(2)高熱、(3)上気道炎症状、(4)全身倦怠感などの全身症状がそろっていれば、医師の判断でそうであると診断することができるので、検査が必須というわけではありません。インフルエンザだと典型的な症状で類推できるとは思いますが、新型コロナ陰性ならインフルエンザだ!というロジックです。オンライン診療という名の電話診察だけでも抗ウイルス薬を処方してしまってよいのか、少しモヤモヤが残ります。
インフルエンザ治療薬の考え方
日本は医療資源が潤沢ですから、インフルエンザと診断されれば抗ウイルス薬がほぼルーティンで投与されます。今シーズン(2022年10月~2023年3月)の供給予定量(2022年8月末日現在)は約2,238万人分とされています2)。
- タミフル(一般名:オセルタミビルリン酸塩 中外製薬)約462万人分
- オセルタミビル(一般名:オセルタミビルリン酸塩 沢井製薬)約240万人分
- リレンザ(一般名:ザナミビル水和物 グラクソ・スミスクライン)約215万人分
- イナビル(一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 第一三共)約1,157万人分
- ゾフルーザ(一般名:バロキサビル マルボキシル 塩野義製薬)約137万人分
- ラピアクタ(一般名:ペラミビル水和物 塩野義製薬)約28万人分
現状、インフルエンザの特効薬のような位置付けになっていますが、合併症のリスクが高くない発症48時間以内に治療を行ったとしても、有症状期間が約1日短縮される程度の効果であることは知っておきたいところです。
これからの冬に向けて必須のテーマだと思います。この2~3年の様子をみると新型コロナ対策でマスクや手洗いなどを徹底すればインフルエンザは流行らないかもしれませんが、昨今の行動のゆるみをみれば流行る可能性もあると思います。
この記事の筆者のような心配は理解できますが、他の疾患の患者さんへの感染を考えると、欧米のように、風邪やインフルエンザはもちろん、新型コロナウイルスによると思われる発熱の場合は、原則として、クリニックや病院に直接行かないでオンラインで診療するようにしてはどうでしょうか?
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