循環血液中のがん細胞由来DNAは転移性乳がんの重要な診断マーカーである

Circulating Tumor DNA Is Key Clue to Breast Cancer Spread
以下は、記事の抜粋です。


転移性乳がん患者の血液中には、がん細胞由来のDNAが存在し、腫瘍マーカーCA 15-3やがん細胞を調べるよりも優れたがん転移マーカーである、とする報告がNew England Journal of Medicineのオンライン版に3月13日に発表された。

ケンブリッジ大学のSarah-Jane Dawson博士らは、30例の転移性乳がん患者の診断画像と血液中のがん細胞由来DNA、CA 15-3、血液中のがん細胞そのものの3つを比較した。

循環血液中のがん細胞由来DNAは、経時的に採血されたサンプルを標的遺伝子あるいは全ゲノムの配列決定により解析された。CA 15-3と血液中のがん細胞も同時に調べた。

30例中29例でがん細胞由来DNAが認められた。一方、CA 15-3は27例中21例で認められ、がん細胞は30例中26例で認められた。また、ダイナミックレンジ(最小信号に対する最大信号の比)は細胞由来DNA量が一番大きく、がん細胞量に良く相関していた。さらに、治療に一番よく反応して変化したのもがん細胞由来DNAだった。

研究者らは、がん細胞由来のDNAが転移性乳がんの特異的かつの高感度バイオマーカーになる可能性があると主張している。


元論文のタイトルは、”Analysis of Circulating Tumor DNA to Monitor Metastatic Breast Cancer”です(論文をみる)。

がん細胞に多く存在するCA 15-3などのタンパク質(いわゆる「がんマーカー」)やがん組織から漏れ出したと思われる細胞(CTC: Circulating Tumor Cells)ががん転移のマーカーになるのではと考えられ、臨床や研究レベルで使われています。

本研究は、これらのマーカーよりも、がん細胞由来のDNAが転移性乳がんのフォローアップに有効であることを示唆しています。今後は、さらに例数を増やして転移性乳がんにおける有効性を確立するとともに、他のがんにも応用可能かどうかが注目されるところです。また、全ゲノム配列決定ということになると、コスト的な問題もあるかと思います。

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