関節リウマチに対する新規ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブの効果

Placebo-Controlled Trial of Tofacitinib Monotherapy in Rheumatoid Arthritis
以下は、論文要約の抜粋です。


背景:トファシチニブ(tofacitinib)は、経口JAK阻害薬で関節リウマチ(RA)に対する治療薬として研究されている。

方法:第3相二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験において、患者611例を、tofacitinib 5mgの1日2回投与群、10mgの1日2回投与群などに無作為に割り付けた。主要エンドポイントは、米国リウマチ学会基準で20%上の改善(ACR 20)が認められた患者の割合などとした。

結果:3ヶ月の時点で、ACR 20を満たした患者の割合は、tofacitinib群のほうがプラセボ群よりも高かった。tofacitinib投与患者では重篤な感染症が6例に発生した。

結論:活動性RAの患者において、tofacitinib単剤療法は、RAの徴候・症状の軽減と身体機能の改善に関連した。


Tofacitinib or Adalimumab versus Placebo in Rheumatoid Arthritis
以下は、論文要約の抜粋です。


方法:安定用量のメトトレキサートを投与されている患者717例を、tofacitinib 5mgおよび10mgの1日2回投与群、アダリムマブ40mgの2週ごと投与群、プラセボ群のいずれかに無作為に割り付けた。主要転帰指標はACR 20など3つを設定した。

結果:6ヶ月の時点で、ACR 20改善率は、tofacitinib 5mg群および10mg群(51.5%と52.6%)と、アダリムマブ群(47.2%)で、プラセボ群(28.3%)よりも高かった。有害事象はtofacitinib群のほうがプラセボ群よりも高頻度に発現した。tofacitinibは、低比重・高比重リポ蛋白コレステロール値両方の上昇と好中球数の減少に関連した。

結論:メトトレキサートによる基礎療法を受けているRA患者において、tofacitinibは、プラセボよりも優れ、アダリムマブと数値的に同程度の効果を示した。


トファシチニブ(tofacitinib)は、ファイザーがRA治療薬として開発中の経口Janus kinase (JAK)阻害薬です。上記の2つの論文は、tofacitinibがプラセボ対照臨床試験で有効であったことを報告しています。

JAKファミリーキナーゼには、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4種類のチロシンキナーゼがあり、造血系の細胞に多く発現しています。サイトカインや成長因子によって活性化されたこれらJAKは、STATファミリーの転写因子をリン酸化し、リンパ球の分化、免疫制御、炎症などにおいて重要な役割を果たしています。JAK1あるいはJAK3を欠損すると免疫不全を示すことも知られています。

tofacitinibはJAK1とJAK3を阻害すると考えられています。上記2つの論文では、他の薬物に抵抗性の重症RA患者に対してtofacitinibが用いられました。どちらの論文でもtofacitinibはプラセボよりも有効であったとのことですが、下の論文ではアダリムマブと同程度の効果を示したとされています。

アダリムマブ(ヒュミラ®)は、ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤で、RA治療薬としての効果が確立されています。本当にアダリムマブと同程度の効果を示すのであれば素晴らしい結果だと思います。しかし、上記の試験では、関節破壊の放射線医学的評価が1年あるいは2年という長期投薬後に行われていないので、本当に抗TNF-α製剤と同程度かの判断はまだできないと思われます。

なぜJAK阻害がRAに効くのか?、他のバイオ・非バイオ製剤との併用は?、治療コストは?、などなどの疑問が浮かびますが、作用メカニズムが異なり抗TNF-α製剤と同程度の有効性があるとすれば、RA患者にとっては大きな福音です。今後の展開に期待したいと思います。

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