赤身肉のカルニチン、実は健康に悪い―心臓疾患リスクに
以下は、記事の抜粋です。
長年、赤身の肉に含まれる飽和脂肪とコレステロールが心疾患リスクを上昇させると考えられてきた。しかし、医学誌「ネイチャー・メディシン」の論文は別の犯人を挙げた。それはカルニチンだ。カルニチンは赤身の肉に多く含まれる化合物で、ダイエットサプリメントとしても販売されているほか、栄養ドリンクにも添加されている。
カルニチンは通常、体内で脂肪酸を細胞に運搬するのを助ける。しかし、ヒトとマウスの両方を対象にした実験で、消化管内にいる特定のバクテリアがカルニチンをTMAO(トリメチルアミンN-オキシド)と呼ばれる別の代謝物質に変え、これがアテローム性動脈硬化を促進させることが発見された。
研究チームは、心機能検査を受けた2595人の患者の記録を分析し、血中のTMAOが多ければ多い人ほど、心血管疾患、心臓発作、それに脳卒中を発症したり、死亡したりする可能性が高いことを発見した。さらに、カルニチンがその死亡リスクを増大させるとの仮説を立てた。
意外な発見の1つは、長期的な食事パターンが消化管内のTMAO生成バクテリアの量に影響を与えることだった。雑食性の人がステーキとカルニチンのサプリメントを摂取すると、バクテリアとTMAOの水準がともに大幅に上昇した。しかし、完全菜食主義者が同じ食事とサプリメントを摂取しても、TMAOとバクテリアの量は全く増えなかった。完全菜食主義者は基本的にカルニチンを消化する能力を失っているという。
これに対し、精肉業界団体は、赤身肉と心血管疾患との関連を疑問視している。サプリメントと栄養ドリンクの業界団体は、今回の研究論文結果が「新しく浮上し始めたばかりの仮説」だと述べた上で、研究者らがマウス、バクテリア、それにヒトのバイオマーカーを用いた小規模の研究で大きな結論を導き出していると批判した。
研究グループは、一部の栄養ドリンクについて、「10年、20年、30年と摂取した場合に何が起こるかを懸念している」と話した。ヒトは通常食事を通して大量のカルニチンを摂取しており、サプリメントとして取る必要はないという。カルニチンはナッツ、豆、野菜、それに果物にも少量含まれている。
元論文のタイトルは、”Intestinal microbiota metabolism of l-carnitine, a nutrient in red meat, promotes atherosclerosis”です(論文をみる)。
カルニチンは、腸内細菌によってトリメチルアミン(TMA)へ代謝され、さらにTMAOへと変換されます。また、TMAOレベルが高い場合にだけ、血中のカルニチン濃度の高さと循環器疾患には関連がありました。これらは、カルニチンの病原性には腸内細菌による代謝が必要であることを示しています。
また、記事によると、サプリメントとしてのカルニチンは、FDAから「安全」とされているそうですが、長期的にその安全性を調べた研究はほとんどないそうです。
サプリメントの広告の一部は、マラソンのような持久力を要するスポーツにおいて、カルニチンは運動後の回復を助けると主張しています。下のコマーシャルで紹介されている医学生は、この論文をどんな気持ちで読むのでしょうか?
また、その下の広告は、ダイエット効果を強調しています。おそらく、その下の図にもっともらしく説明されているように、脂肪が燃焼するからダイエット効果があると言いたいのでしょう。いずれにしても、カルニチンを避けるために肉食を止めるほどではないにしても、わざわざサプリを買ってまで摂ることはなさそうです。
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