エゼチミブ(ezetimibe、商品名ゼチーア):スタチンとの併用、TG低下作用など。

エゼチミブは、小腸上皮細胞でのコレステロール吸収に関わる輸送体Niemann-Pick C1 Like 1 タンパク(NPC1L1)の活性を阻害することで、血中のコレステロールを減少させるという作用を持ちます。

NPC1L1を介するコレステロール吸収の分子機構とコレステロール吸収阻害薬については、坂上元祥氏の総説をご覧ください(総説をみる)。
エゼチミブについて、2つの記事を紹介します。


Ezetimibe(エゼチミブ)の臨床試験の波紋

このENHANCE試験は、ヘテロ接合型家族性高脂血症の患者を対象に、simvastatin(商品名リポバス;一日80mgを投与)とezetimibe(ゼチーア;同10mg)の両方、またはsimvastatin(同80mg)だけを2年間投与して、頚動脈のアテロームの拡大を抑制する効果を比較したものです。

試験の結果、主評価項目でも、副次的評価項目でも、有意差は出ませんでした。しかし、simvastatin 80mg(欧米の最大承認用量、多すぎる)、ezetimibe 10mgというデザインに問題があると思われます。

EzetimibeのTG低下作用

この著者は、エゼチミブの中性脂肪(TG)低下作用について疑問を持っています。確かに、著者が引用しているデータでは、エゼチミブ単独使用でのTG低下作用は、atorvastatin(商品名リピトール)あるいは、pravastatin(商品名メバロチン)単独よりも劣っています。

一般に、エゼチミブ10mgのLDLコレステロール低下作用は、pravastatin(メバロチン)10mgとほぼ同じだと考えられています。それほど強い作用ではありません。

しかし、スタチンとは作用機序が異なるためか、コレステロール低下作用もTG低下作用も、併用の効果が現れます。この効果は、スタチンを少量用いた時の方がはっきりしています。

このブログで紹介されているデータをみても、pravastatin(メバロチン)10mgとの併用で23%、atorvastatin(リピトール)10mgとの併用では31%、TGが低下しています。スタチン単独では、それぞれ14%と21%ですので、併用が効果的であることがわかります。


以下に、エゼチミブについてまとめておきます。

1.単独使用でのLDLコレステロール低下作用は、プラバスタチン(メバロチン)とほぼ同じで、あまり強くはない。
2.スタチン少量(メバロチン10mgやリピトール10mgなど)投与であまりLDLコレステロール低下がみられない時、スタチンの増量よりも、エゼチミブを併用した方がLDLコレステロールが下がる。副作用の面でも、スタチンの増量よりも併用の方が安全。
3.中性脂肪(TG)低下作用は、単独使用では小さいが、スタチンとの併用で大きくなることが期待できる。メカニズムとしては、コレステロール吸収量が低下することで、小腸壁細胞内におけるカイロミクロンの形成が低下し、二次的にTG値が下がると考えられる。
4.スタチンを長期使用すると、小腸でのコレステロール吸収が亢進するので、この点でも併用は効果的。

以上から、スタチン少量との併用はすすめられるが、単独使用はすすめられない。ただ、薬価が高いので、先ずはスタチンの増量をやってみて、問題があればスタチンを少量にもどし、エゼチミブを併用するのが良いかもしれません。

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