「痛風」の原因遺伝子見つけた!…発症26倍に
以下は、記事の抜粋です。
痛風の主要な原因遺伝子を、防衛医大や東大など11大学・機関の共同研究チームが世界で初めて突き止めた。
この遺伝子の変異によって最大で26倍発症しやすくなるという。11月5日付の米科学誌Science Translational Medicine電子版に発表する。
松尾洋孝・防衛医大助教と高田龍平・東大病院助教らは、腎臓や小腸で体外へ毒物を排出するポンプとして働くABCG2というたんぱく質に着目。患者と健康な人計1093人について、ABCG2を作る遺伝子の配列を比較した。
その結果、ポンプをつくれない遺伝子変異や、ポンプの数が半分にしかならない遺伝子変異が、患者の8割で見つかった。変異遺伝子を両親から受け継いだ場合は最大26倍、どちらか一方だけを受け継いだ場合は3~4倍、痛風を発症しやすくなることもわかった。松尾助教は「効果的な予防や治療に役立つだろう」と話している。
論文の要約はここ。
ABCG2は、ATP-binding cassette sub-family G member 2の略です。ATP-binding cassette(ABC)トランスポーターは、major facilitator superfamily(MFS)の一部で、物質輸送に関係する一群の膜タンパク質です。
ABCトランスポーターは、ATP結合領域を1分子内に2つ有する膜タンパク質ファミリーの総称です。現在、約250種のABCトランスポーターが同定されており、ヒトには約50種類が確認されています。
痛風は、関節包内に析出した尿酸の結晶に対する炎症反応で、高尿酸血症に伴うことが多いです。ヒトではABCG2が尿酸を輸送し、その機能が低下すると、尿酸が血中から尿へうまく排泄できなくなって痛風になるということのようです。
ABCトランスポーターは、生物種を超えてアミノ酸配列が良く保存されています。私たちが扱っている分裂酵母にもABCトランスポーターは複数存在します。その中で、ABCG2に最もアミノ酸配列が似ているのは、Bfr1という薬剤耐性に関与する遺伝子です(1.6e-56)。
これほど良く似た分子がヒトでは尿酸排泄、酵母や真菌では薬剤耐性と全くちがう機能をしているように思えますが、そうではなく、真菌でも代謝産物などを細胞外へ運ぶ役割のものが、たまたま薬物も運ぶということだと思われます。
ところで、Johns Hopkinsのグループによる同様の論文がPNASにありました。
Identification of a urate transporter, ABCG2, with a common functional polymorphism causing gout
紹介記事は、ここです。この論文は、今年の6月8日に発表されています。「世界で初めて突き止めた」のはどちらかわかりませんが、最初に公表したのはこちらのようです。
紹介記事によると、白人では、痛風患者の約1割にこの遺伝子の変異があるそうです。読売の記事に書かれている「8割」は、ちょっと多すぎるような気がしますが…
コメント