以下は、記事の抜粋です。
子どもの遺伝子変異で親から受け継いだものではない、まったく新たな変異が起きる最大の要因は、受胎時の父親の年齢にあるとする研究論文をdeCODE社などのチームが8月22日、Nature誌に発表した。
研究チームは、親の遺伝子にはないゲノム配列の変化を見つけるために、両親と子どもの親子3人計78組と対照群数百組のゲノム解析を行った。その結果、遺伝子に起こる新生突然変異の発生率の増加は、要因の97.1%が受胎時の父親の年齢にある可能性が示された。一方、新生突然変異の発生率の増加と、受胎時の母親の年齢には関連は見いだされなかった。
著者のAlexey Kondrashov氏によると、現在の新生児は平均して約60の小規模な新生突然変異を持って生まれてくる。父親が20歳の場合、新生突然変異の平均数は25だったが、40歳の場合では65だった。新生突然変異が起こる確率は受胎時の父親の年齢が上がるほどに上昇し、父親の年が16歳違うと発生率は倍になった。つまり20歳の父親に比べて36歳の父親のほうが、子どもに新生突然変異が起こる確率が2倍になるということになる。
過去の研究では遺伝子の新生突然変異と、自閉症や統合失調症との関連が指摘されており、またそうした疾患と父親の年齢について統計的関連性が示されていた。deCODE社のKari Stefansson氏は「近年の自閉症例の増加の一部は、父親の高年齢化によって説明しうる」と語っている。
元論文のタイトルは、”Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk”です(論文をみる)。
論文によると、研究グループは、両親と子の3人組で構成される78組の全ゲノムを高カバー率で塩基配列解読し、ゲノム規模の変異率について調べました。父親の平均年齢は29.7歳でした。子の受胎時の父親の年齢が一塩基多型の変異率の多様性に影響し、1歳当たり約2個の変異増だったそうです。
この研究で父親の年齢とともに増加するとされるde novo変異率は、統合失調症や自閉症などの疾患のリスクと強く関連するという報告があります。関連記事でも紹介しましたが、自閉症スペクトラム障害に関連するde novo点突然変異は、圧倒的に父系起源である(4:1の偏り)ことと、父親の年齢と正の相関があることが報告され、これらの結果は父親の年齢が高い子供のほうが自閉症スペクトラム障害発症リスクが少し高い事実と一致するとされています(記事をみる)。
Bernard Shawは、”It is a woman’s business to get married as soon as possible, and a man’s to keep unmarried as long as he can.”と言ったそうですが、自分の遺伝子をできるだけ無傷で子供に伝えたい場合は、若い間に精子を冷凍保存しておく必要があるかもしれません。
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