甲状腺検査、福島以外でも実施 実態解明へ他県と比較――過剰検査の恐れはないか?

甲状腺検査、福島以外でも実施 実態解明へ他県と比較

以下は、記事の抜粋です。


福島原発事故による健康影響の調査に関連して、政府は福島県以外の全国3カ所以上で4500人規模の甲状腺超音波検査を行うことを決めた。福島県は18歳以下の甲状腺超音波検査をしているが、約36%でしこりなどが見つかり、住民から心配する声があがっている。他県と比較検討したうえで、実態を説明する資料にする。

内閣府によると、調査では福島県と同じ条件になるように超音波機器や判定の基準をそろえる。日本甲状腺学会などの専門医が担当し、疫学の専門家を加えて結果を検討する。

チェルノブイリ原発事故後に子どもの甲状腺がんが増えた教訓から、福島県は、事故当時0~18歳だった県民を対象に、甲状腺超音波検査を定期的に行う。今年3月までに受診した約4万人のうち、約36%で結節や嚢胞が見つかった。


甲状腺小胞では、甲状腺刺激ホルモン、各種の成長因子、サイトカイン、ヨウ素などの刺激に応答して常に細胞が増殖し、リモデリングが行なわれています。これらの生理的な刺激が強くなっただけでも組織の過形成がおこり、甲状腺の結節ができます。甲状腺の結節は日常診療でも頻繁に認められ、超音波検査を行なうと成人の場合、25~50%に結節が認められるといわれています。

記事では36%にしこりなどがみつかり、住民から心配する声があがったので他県と比較して、実態を説明する資料にすると書かれているので、調査する学会関係者らは、36%という数字が高くはなく、他県でも同様の数字が出ることで住民は納得するだろうと考えているのだと思われます。

問題は、それでも住民が心配した場合にどうするかです。超音波検査の次の段階の検査として行なわれるのは、穿刺吸引(バイオプシー)によって得られたサンプルの細胞診ですが、細胞診をしても甲状腺結節の約15~30%は、良性か悪性かがはっきりしないといわれています。その次は、外科的切除による病理診断になります。

一方、関連記事で書いたように、たとえ悪性と診断されたとしても、甲状腺がんは極めて予後が良いものが多いために、甲状腺被膜外浸潤、リンパ節転移、遠隔転移、遺伝性甲状腺がんなどが否定される場合には直ちに手術をせず経過観察をおこなうこともあります。

本来必要のない超音波検査を他県でも行なうことで、甲状腺にしこりがみつかってしまった他県の住民に不安と過剰検査を拡散させることになるのが心配です。

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