以下は、記事の抜粋です。
山口大医学部と工学部の教授らが、大学と取引がある業者に物品を架空発注するなどし、国などから交付された研究費を業者に預ける不正経理を繰り返していた疑いがあることが、大学関係者への取材でわかった。
調査に対し、複数の教授らが不正にかかわったことを認めており、両学部で退職者を含め十数人が関与し、不正経理の総額は1億円を超える可能性もある。
関係者らによると、教授らは架空発注した物品の代金を研究費から支出して業者に支払い、「預け金」として保管を依頼していた。また、領収書や納品書を改ざんして実際に仕入れた品物より、高い品物が納入されたことにして、その差額を業者に預けていた。1人で数千万円に上る不正を繰り返した疑いがある教授もいるという。
こうした不正は、2009年10月に広島国税局が山口大を対象に行った税務調査と取引業者への調査で発覚。指摘を受けた同大は同年12月に学内外の委員で構成する調査委を設置した。
大学の研究費を巡る不正が全国で相次いで発覚したため、山口大は08年8月、教職員や取引業者を対象に不正の有無に関する調査を実施。全員が不正を否定していたという。
研究費や補助金の不正流用は、東京大や名古屋大、岡山大、和歌県立医科大などでも発覚。各大学は関与した教授や准教授を諭旨退職や停職、減給などの懲戒処分にしている。
大学の調査では全員が不正を否定していて、国税局の調査ではじめて発覚したのが辛いですね。
ところで、文科省や学術振興会から支給される科学研究費の場合、単年度予算としての会計処理が要求されます。
単年度予算がどんなものかわかりやすいように、2007年から2009年の3年間に1000万円ずつ、計3000万円の研究予算が、ある教員のプロジェクトに対してに支給されると仮定します。
研究費支給の決定は、2007年の4-5月ごろに通知されますが、6月までは使用できません。また、当該年度予算による納品は2月までに終えることが要求されますので、2007年7月から2008年2月までの間に1000万円を使い切らなければいけません。さらに、次年度の研究費支給が確定していても、初年度と同様に2008年6月までは使用できません。最終年度も同様です。
つまり、3年間の支給が約束されている研究費の場合でも、7月から翌年2月までの間に1000万円を使いきり、3月から6月までは1円も使わないことが要求されます。これが3年間続きます。
企業等からの奨学寄附金をもっている研究者は良いのですが、文科省科学研究費のような単年度予算の研究費しかもたない教員は、毎年3-6月の4ヶ月間はまったく研究費が使用できません。
このような単年度予算の研究費しかもたない教員は少なくありません。「預け金」の多くは、この「研究費空白期間」を埋めるために使用されたと思われます。
菅直人副総理・財務相は1月15日の閣議後会見で、複数年度予算の導入に向けた予算編成改革の一環として、各府省や地方自治体が予算執行を次年度に持ち越す「繰越制度」の見直す方針を示したそうです。
宮川剛氏も指摘するように、単年度予算制度は、科学予算に巨額のムダを生んでいます(ブログ記事をみる)。以下にその部分を引用します。
・単年度予算の制度が巨額のムダを生んでいます。使い切らないと次年度減額される、ということで、不要なものを購入したりするわけです。その年度の予算にちょうどピッタリ合わせるように会計を一生懸命考える労力も多大なものでばかになりません。不正な研究費の プールが問題にされていますが、納税者の立場からすると自分がおさめた税金ができるだけ効率的に使われて欲しいと思うわけで、年度末の不要な物品の購入を促進するような制度そのもののほうが遥かに不正であるように感じます。
予算のムダや「預け金」をなくすために、早急に複数年度予算を導入して欲しいと思います。
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