逃れた北の地で身を寄せ合っていたら病が蔓延して死に追いやられていくという悲しいゴキブリの世界

北海道でゴキブリが「木にびっしり」…なぜ札幌の高級住宅街の隣が“聖域”となったのか
以下は、記事の抜粋です。


ゴキブリは冬の寒さが厳しい北海道にはいない――と言われるが、札幌市内の高級住宅地の近くに、ゴキブリの「聖域」がある。ゴキブリの「聖域」は、札幌市の中心部から西へ3.5キロほど、市民の憩いの場である円山公園にある。このゴキブリは、ヤマトゴキブリという日本の土着種で、主に屋外をすみかとする。クロゴキブリの3分の2ほどのサイズで、色はつやを消した黒といった感じだ。

屋内で目にするゴキブリと言えば、本州以南では主にクロゴキブリとチャバネゴキブリである。どちらも暖かい場所を好み、冷涼な北海道ではどちらのゴキブリも数は少なく、目にすることはめったにないという。一方、ヤマトゴキブリは、冷涼な気候を好むのだという。そのため、沖縄には分布していない。

かつてヤマトゴキブリは本州を中心に広く分布していたが、最近は生息域を北日本に狭めている。地球温暖化の影響や、体の大きなクロゴキブリに追いやられたため、と見られている。

そんなヤマトゴキブリが、なぜ円山公園に定着しているのか。

円山公園には古い木が多いので、昼間は木肌の割れ目やうろに、ヤマトゴキブリは潜んでいて、夜には、散策した人が落とした食べ物や食べ残しを食料にしているそうだ。木の周囲が除雪されないのでギリギリ耐えしのげる気温が維持できていることがヤマトゴキブリが繁殖する理由だという。

しかし、円山公園のゴキブリたちは、外に生息域を広げられない理由を抱えている。

北大でゴキブリを研究する西野さんが説明する。「円山公園のヤマトゴキブリは『ラブルベニア』という菌類に汚染されていて、秋口になるとバタバタと死んでいくんです」

ラブルベニアの一種はヤマトゴキブリの触角に寄生する。寄生された触角はどんどん短くなり、ゴキブリは餌やメスを探すことが困難になって、やがて死んでしまうのだ。「ラブルベニアに完全に侵されてしまうと、動きがヨタヨタになって、見ていてもかわいそうな状態になります」

集団性があるゴキブリは、触角を触れ合わせることで、仲間とコミュニケーションを図る。その接触を通じて、ラブルベニアは集団の中に広まっていく。「聖域」の生息密度が高いことが、ラブルベニアがまん延しやすい原因になっているという。

「自然界のヤマトゴキブリがラブルベニアに感染していることはほとんどないらしいのですが、円山公園の個体はほぼすべて感染しています。なので、寿命をまっとうできず、人間だと30、40代で死んでしまう感じです」

西野さんは3年ほど前からヤマトゴキブリを使って研究をしているが、元気そうな個体を採集してきても、1~2週間で触角がラブルベニアに覆われてしまい、次々に死んでしまうのだという。


以下は、この記事に寄せられたはてなブックマークでのコメントです。同感です。


●逃れた北の地で身を寄せ合っていたら病が蔓延して死に追いやられていくという悲しい世界。ヤマトゴキブリに生まれないで良かった。


ラブルベニアは、分類上左の図のようにカビ(fungi)界の子嚢菌門に属しています。子嚢菌門は、微小な子嚢(しのう)を形成しその中に減数分裂によって胞子を作るのを特徴とする。例として、酵母(出芽酵母、分裂酵母)、カビ(アオカビ、コウジカビ、アカパンカビ)や、一部のキノコ(アミガサタケ、トリュフ)があります(wikiをみる)。

ムシの世界にも大変な病気があるということを知りました。このラブルベニアはクロゴキブリやチャバネゴキブリにも感染するのかどうか、知りたいと思いました。

Laboulbenia slackensisというオサムシに寄生するラブルベニアの一種の生活環

昆虫に寄生する菌としては、冬虫夏草しか知らなかったのですが、ラブルベニア目は、2000種以上で、ほとんどが昆虫に寄生し、その種、性別、寄生部位によって寄生する菌の種も異なるということをこの記事をみて初めてしりました(wikiをみる)。

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