渓流で一生を過ごす淡水種なのに「サワガニ」は海流に乗って分散していた!
以下は、記事の抜粋です。
信州大学は新たな研究で、日本固有種であるサワガニの祖先が琉球列島などの南西地域に起源し、そこから陸を伝って北方へ拡散した証拠を発見。その中で陸路分散だけでは説明できないグループを発見し、それらが「黒潮」にのって海を渡った可能性が支持されました。
しかし、サワガニといえば一生を淡水で過ごす生き物です。この説が正しいとして、海水に耐えられる能力はあるのでしょうか?
日本列島に広く分布するサワガニ(Geothelphusa dehaani)は、本州〜沖縄にかけて、河川や渓流、里山の水路や水田で見かけられます。また、住んでいる場所によって体の色が異なります。例えば、屋久島やトカラ列島の集団は青白い体、九州本土の集団では赤色の体が特徴的です。
そこで研究チームは、日本列島のサワガニの分布域を網羅する計126地点から268匹を採集し、遺伝子分析を行いました。その結果、サワガニの近縁種(同属別種) が国内では南西諸島に種類が多く、また海外のサワガニ類についても東南アジア地域の種多様性が高いことが判明しています。
このことから、日本固有のサワガニの祖先は琉球列島などの南西地域に起源し、そこから北方へと拡散していったことが支持されました。ここではサワガニの遺伝子に「距離による隔離」の効果が見られます。距離による隔離とは、遺伝的距離と地理的距離に「正の相関」が生じる現象で、分布域が近いほど遺伝的にも近く、分布域が遠いほど遺伝的にも遠くなります。
ところが、系統4だけ明らかに「飛び地」的に分布しており、陸路での移動では説明がつきませんでした。そこで系統4の遺伝子を調べたところ、最も近縁だったのは地理的に遠く離れた九州や琉球の集団に当たる系統3(赤色)だったのです。
実際、伊豆半島に生息するサワガニは屋久島に見られる個体と同じく、青白い体をしています。このことから、系統4は東シナ海を北上する「黒潮」にのって伊豆半島・三浦半島・房総半島へと海流分散したと結論されたのです。
サワガニは純淡水種であり、図鑑や文献には「海水では生きていけない」との記載も見られます。そこでチームは海水でも生存できるか調べるため、サワガニの耐塩実験を実施。その結果、サワガニは海水と同程度の塩分濃度でもほぼ問題なく生存できることが判明したのです。実験では、海水の中に2週間いても高い生存率を示しました。
海流分散が示唆された系統4だけでなく、陸路分散した他の系統でも調べてみましたが、同様に高い塩分耐性を持っていたとのこと。つまり、すべてのサワガニには潜在的に高い塩分耐性があり、海流分散も可能であると考えられます。
南西諸島には海の注ぐような小規模河川も多く、海岸線付近の淡水域にもサワガニが生息しています。その河川で起こる洪水によってサワガニが海に流されている可能性が高いという。そして2週間も海水で生存できるなら、黒潮にのって伊豆半島へと流れ着くのは十分に可能だと推測されます。
サワガニは、実家近くの川にも住んでいて、子供のころの川遊びで捕まえて家で飼ったりしていましたので、とても興味深い記事でした。
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