Why Do Parrots Talk? Venezuelan Site Offers Clues
以下は、記事の抜粋です。
世界で最も長く続けられている野生のオウムの研究が24年目に入り、タンザニアでのチンパンジーやケニアでのゾウの長期研究に匹敵するものになっている。
先行する個体追跡研究が、チンパンジーやゾウに対する我々の理解を変えたように、このオウムの研究もオウムの心理や行動について全く新しい知見をもたらした。これまで研究者らは、ルリハインコの詳しい生態と生活史の詳細を調べてきたのだが、彼らのプロジェクトはインコのコミュニケーションスキルの解明という新しい段階に突入した。
先週、研究者らはルリハインコのヒナ鳥のコンタクトコール(名前のような機能をもつ音声)は遺伝的に決められたものではなく、生後学ぶものであることをProceedings of The Royal Society Bに発表した。ヒナ鳥は、ヒトの子供が自分の名前を学ぶように、親鳥からコンタクトコールを学ぶことが明らかになったのだ。これは、野生のオウムが音声を学習することを明らかにした最初の実験的証拠である。
元論文のタイトルは、”Vertical transmission of learned signatures in a wild parrot”です(論文をみる)。
記事によると、このオウム観察研究は、1985年にSteve BeissingerというUCBの学者がベネズエラのカラボゾの牧場付近で猛禽類を研究している時に、牧場フェンスの柱の空洞にルリハインコのペアが巣作りをするのをみて、オウムは通常、高い木の上に巣作りをして研究が難しいことを思い出し、「低いところに置いた人工的な箱で巣作りしてくれたら生態が研究できる!」とひらめいたのがきっかけだそうです。
2年後Beissingerは、ポリ塩化ビニル製パイプで、観察しやすいように取外しできる蓋や底がついた巣箱を作りました(下の写真1)。ネットが内側にあって中身がごっそり取り出せるようになっています(下の写真2)。これがうまく行ったのをみて、次の年には塩化ビニル製の巣箱を40個追加しました。今では106の巣箱が置かれているそうです。Beissingerのチームはこれまでに、8500羽以上のルリハインコが3000の巣作りをするのを観察し、16000個の卵の成長過程を追ったそうです。
おもしろいのは、巣箱を研究者が毎日研究のために巣箱をモニターし、卵にコード番号を書き、ヒナを触って体重を量ったり、足にアルミやプラスチックの足輪をつけることに、ルリハインコが驚くほど耐性があることです。おかげですべての鳥の標識と家系調査が可能になりました。
これらの積み重ねの上に今回の研究があり、「なぜオウムは話すのか?」というアリストテレスの時代からの疑問がある程度解けたのです。本研究で、つがいや近縁の個体を識別するために用いられるコンタクトコールという音声は、親鳥から教わることがわかりました。この能力によって、生存競争の厳しい大きな群れの中でそれぞれの家族の存在が守られていると考えれらています。オウムの仲間は、音声を学ぶ能力が高いのでヒトの言葉も上手にまねることができるのでしょう。
論文の第1著者のKarl Berg氏は、ルリハインコの場合“I hear you, Joe. It’s Betty here.”とか“Hi, honey, I’m home.”レベルの会話も行なわれていると推測しています。もっとも、このインコの会話は早すぎてヒトの耳では識別できず、spectrogramでみないとわからないそうです。
1. ポリ塩化ビニルの家(Scienceより)
2. メスと子供達(Scienceより)
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