以下は、記事の抜粋です。
心筋梗塞や脳卒中の原因となる動脈硬化が起きる新たな仕組みを解明したと、東北大学医学系研究科の片桐秀樹教授らが8月1日付のサーキュレーション電子版に発表した。この仕組みには、細胞内で生み出されたたんぱく質をひも状から立体的な構造に折り畳む小胞体の異常が関与しており、心筋梗塞などの新たな予防・治療法の開発につながる可能性があるという。
小胞体に正しく折り畳めないたんぱく質がたまる「小胞体ストレス」と呼ばれる状態が悪化すると、「CHOP」というたんぱく質が働いて細胞自体が死んだり、血管に炎症を起こしたりする。
片桐教授らは、動脈が硬化した部分でCHOPが増えていたため、CHOPを作れない高コレステロール血症のマウスを遺伝子操作で生み出した。その結果、血管の炎症が抑えられ、コレステロールが高くても動脈硬化になりにくくなることが判明。CHOPの合成を妨げる方法が見つかれば、新予防・治療法になると考えられる。
元論文のタイトルは、”Involvement of Endoplasmic Stress Protein C/EBP Homologous Protein in Arteriosclerosis Acceleration With Augmented Biological Stress Responses”です(論文をみる)。
CHOP (C/EBP Homologous Protein)は、C/EBP (CCAAT/ enhancer-binding protein)ファミリーに属す転写因子で、小胞体ストレスにより誘導され、アポトーシスを誘導すると考えられています。CHOPの誘導にATF6が重要であることや、CHOPの下流では、Baxの活性化とミトコンドリアへの移行がおこることが知られています。また、マクロファージでは、CHOPの下流で、アポトーシスに向う経路以外に炎症反応を調節する経路が機能していることも知られています。
記事では、本研究がCHOPノックアウトマウスで動脈硬化を調べた最初のものであるかのように書いていますが、そうではなく、2009年にApoe -/-やLdlr -/-による動脈硬化がCHOPノックアウトマウスで抑えられるという報告があります(論文をみる)。本研究の新しいところは、cuff injuryという物理的な手段で作成した動脈硬化もCHOPノックアウトで抑制されたという部分のようです。
本研究グループも主張しているように、CHOPの下流にはアポトーシスを含めて複数のプロセスが働いているようです。CHOPの合成や働きを阻害した場合に、動脈硬化の抑制だけがおこるということであれば、新予防・治療法になると思います。
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