JAK阻害剤トファシチニブ(ゼルヤンツ®)が全身脱毛症にも有効

関節炎薬が全身脱毛症にも有効
以下は、記事の抜粋です。


体毛が全く生えなくなる稀な疾患である全身脱毛症の患者に、関節炎の治療薬であるトファシチニブ(ゼルヤンツ®)を投与することで、頭皮全体に髪が生えたことが新たな研究で報告された。患者は25歳の男性で、同薬による治療で頭髪だけでなく、眉毛、睫毛のほか、顔面、腋窩、その他の体毛も生えるようになったという。全身脱毛症には完治や長期治療の方法がなく、治療の成功例が報告されたのは今回が初めてだという。

「Journal of Investigative Dermatology」オンライン版に6月18日掲載された今回の研究によると、この患者が1日10 mgのトファシチニブクエン酸塩の服用を開始して2カ月後、頭髪と髭が生え始めた。その後、同薬を1日15 mgにし、3カ月間服用すると、頭皮全体に髪が生え、明確に視認できる眉毛および睫毛のほか、顔面、腋窩およびその他の体毛も生えるようになった。8カ月後には体毛が完全に再生した。患者に自覚できる副作用はなく、臨床検査でも問題は認められなかった。

著者のBrett King氏は、トファシチニブが免疫系による毛嚢への攻撃を止めることによって、体毛の再生を促すと考えられると説明する。次は、この疾患の治療にトファシチニブのクリーム剤を使用する臨床試験を実施したいという。


元論文のタイトルは、”Killing Two Birds with One Stone: Oral Tofacitinib Reverses Alopecia Universalis in a Patient with Plaque Psoriasis”です(論文をみる)。

論文は、乾癬の患者にトファシチニブを使ったら、全身脱毛症も良くなったという症例報告のようです。近年、乾癬は関節リウマチCrohn病とならぶ代表的なTh17細胞性慢性疾患と考えられるようになり、治療上も抗TNF-αモノクローナル抗体であるアダリムマブ とインフリキシマブが有効だそうです。

さらに、未熟なT細胞からTh17細胞になるためにはJAKが重要だとされており(記事をみる)、記事には書かれていませんが、乾癬にもJAJ阻害薬トファシチニブが用いられています(記事をみる)。

トファシチニブは日本でも関節リウマチの治療薬として承認・販売されているJAK阻害薬です。本ブログにも多くの記事がありますので、メカニズムや副作用に興味のある方は、以下の関連記事をご覧ください。

関連記事
関節リウマチに対するJAK阻害剤トファシチニブとメトトレキサートとの比較
経口の関節リウマチ治療薬ゼルヤンツ®(トファシチニブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬)が日本発売
日本リウマチ学会からのお知らせ  トファシチニブについて
経口抗リウマチ薬JAK阻害剤トファシチニブ(tofacitinib)が日本で承認
関節リウマチに対する新規ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブ、FDAが承認
活動性潰瘍性大腸炎における経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブの効果
関節リウマチに対する新規ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブの効果

コメント

タイトルとURLをコピーしました