以下の記事は、今の日本で最も身近に新型コロナウイルス感染症の症例に接している感染症専門医の一人である、 忽那賢志氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室医長)が書かれたものです。デマやフェイクニュースに惑わされずに真実を知るようにしてください。
徐々に見えてきた新型コロナウイルス感染症の重症度と潜在的な感染症数
以下は、記事の抜粋です。
1月29日から31日にかけて武漢市に滞在する日本人565人が帰国し、PCRというウイルスの遺伝子検査が行われたところ、8名が陽性となりました。
検疫所で症状のある28人は医療機関に送られ、無症状とされた方も国立国際医療研究センターで診察が行われ、症状があると判明した35人が入院となっています。500人は無症状ということでしばらく(おそらく最大の潜伏期の14日間)はホテルに滞在するとのことです。
現時点では、このうち有症状者3人と、5人の無症候性感染者、計8人が新型コロナウイルスのPCRが陽性でした。帰国者の1.4%が新型コロナウイルスに感染していたことになります。
これは素直に解釈すると驚異的な数字です。武漢に滞在していた日本人の1.4%が新型コロナウイルスに感染していたということは、武漢の人口が1108万人ですから、単純計算で武漢では10万人くらいの感染者がいるということになります。
このことから分かるのは、おそらく今の時点で武漢市では新型コロナウイルス感染症が蔓延しており、診断されていない症例がもっともっとたくさんいるのでしょう。
現地では軽症例は検査の対象になっておらず重症例を中心に診断・治療が進められていると考えられます。おそらく武漢市ではもっとたくさん軽症の未診断例がいることでしょう。
対照的に、今回帰国した方のうちの陽性例には軽症例や症状の無い人も含まれています。日本以外でも、この厳戒態勢の中できる限り新型コロナウイルス感染症の患者を見逃すまいとしていることから、軽症例も拾い上げられていると推測されます。
その証左として、2020年2月1日時点での致命率は2.2%となっていますが、武漢市での致命率が6.0%と群を抜いています。武漢市以外の湖北省の致命率が1.4%、湖北省以外の中国全土の致命率が0.2%、中国以外の国々での致命率は0%です。
これらの事実から分かることは、おそらく武漢市にはもっとたくさんの新型コロナウイルス感染症の患者がいるが、いまのところ重症例を中心に診断されていることから見かけ上の致命率が高くなっているということです。
武漢市での流行から時間差があり世界中に広がっていること、そして新型コロナウイルス感染症は発症から1週間以上経過してから重症化することがあることから、今後中国以外でも死亡者が出る可能性は高いと考えますが、少なくとも日本での致命率が武漢市を超えることはないでしょう。新型コロナウイルスの拡散はとどまるところを知りませんが、一方で重症度については当初の想定よりもずっと低くなりそうです(とはいえ、持病を持つ方や高齢者では重症化のリスクがあることは間違いありません)。
未知の感染症が広がることに不安を覚えるのは当然ですが、新型コロナウイルス感染症のリスクを正しく評価し、正しく恐れることが大事です。現状を正しく認識し、こまめな手洗い、咳エチケットといった普段から個々人ができる感染予防をより丁寧に行っていきましょう。
上の記事は2月2日に発表されたものですが、忽那氏は2月2日の学会で、国内で確認された患者らの情報を基に「1週間ぐらい(のどの痛みやせきなどの)上気道炎の症状が続く」と報告したそうです。さらに、発症からしばらくは「肺炎を伴わないことがあり、診断が難しい」と述べたそうです(記事をみる)。これは少し気持ち悪いですが、時間と共に診断方法も確立する思われます。むやみに恐れるのではなく、正しく恐れましょう。
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