タミフル早期投与を通知=不使用の男児死亡受け-厚労省
以下は、記事の転載です。
新型インフルエンザへの感染が判明した横浜市の小学6年の男子児童(12)が、タミフルなどの治療薬を投与されないまま死亡したことを受け、厚生労働省は18日、簡易検査の結果が陰性でも、治療薬の早期投与を検討するよう求める通知を出した。
男子児童は2日に発熱し、簡易検査を3度実施したが、いずれも陰性だった。14日に遺伝子検査で感染が判明したが、医師が重篤だった心筋炎の治療を優先し、タミフルなどの治療薬が使われないまま、17日に死亡した。
横浜のケースを以下に要約します。
横浜市は9月17日、新型インフルに感染し、重症となっていた同市の小学6年男児(12)が死亡したと発表した。男児には気管支ぜんそくの基礎疾患があった。
市によると、男児は2日午前、発熱し嘔吐とぜんそくの症状を訴えて、病院で受診。いったん帰宅したが、熱が下がらず意識がもうろうとしたため、翌日入院。三度の簡易検査は陰性だったが、血液検査で10日にA型インフルの可能性が高いと診断され、14日に横浜市衛生研究所のPCR検査で新型インフルエンザと確認された。
集中治療室で治療を受けていたが、17日夕、頭蓋内出血で死亡した。心臓の筋肉に炎症が発生したため、この治療を続けていた。タミフルなどインフル治療薬は服用しなかった。
記事の最大の問題点は、あたかも横浜の患者が抗インフル薬を使用すれば、救命できたかの様に書かれていることです。
タミフル(オセルタミビル)やリレンザ(ザナミビル)などのニューラミニダーゼ阻害薬は、発症から48時間以内しかその有効性が確認されていません。インフルの可能性が高いと診断された10日は、投与のタイミングから1週間遅れています。
また、厚労省の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会は6月16日、タミフルの10代患者への原則使用中止について「対策変更の積極的な根拠がない」として中止措置の継続を決定しています。この中止措置が撤廃されたという情報はありません。
また、リレンザは吸入薬であるため気道を刺激しやすく、海外では、喘息患者に投与した際に気管支攣縮や呼吸困難がおきたという報告があります。横浜の患者も喘息の症状を訴えて受診しているので、リレンザの投与にも慎重になると思います。
さらに、横浜の患者の場合は、心筋炎や頭蓋内出血という、インフルとの関連が明らかではない病態が死因とされています。記事を読むかぎり、治療に問題はなく、タミフルを投与していれば救命できたとする根拠はありません。
これらの状況から考えて、横浜のケースを理由に、タミフル早期投与を通知するというのは、科学的根拠にもとづいておらず、現場に混乱を生むと思います。
厚労省は、タミフル投与と異常行動には明らかな因果関係はないという結論を出しながら、10代患者への原則使用中止措置を続けています。措置を撤廃してから、早期投与を通知すべきです。一方、早期投与で心配なのは耐性ウイルスの発生です。米国では、耐性ウイルスの発生につながるとして、予防投与は控えることとされています。科学的根拠にもとづいた適切な薬物投与を徹底しましょう。
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