C型肝炎、高脂血症治療薬エゼチミブ(ゼチーア®)で感染防止

C型肝炎、高脂血症治療薬で感染防止

以下は、記事の抜粋です。


小腸からのコレステロール吸収を抑える高脂血症の治療薬に、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染を防ぐ効果があることが、広島大と米イリノイ大の共同研究でわかった。
将来、がんになる危険性が高いC型肝炎の治療につながると期待される。ネイチャー・メディシンに1月9日、発表する。

広島大病院の茶山院長らは、小腸でコレステロールを吸収する際に働くたんぱく質「NPC1L1」が、肝臓細胞の表面にもあることに着目。ウイルスの体にはコレステロールが含まれているため、NPC1L1がHCV感染にも重要な役割があると考えた。

人間の肝細胞を移植したマウスをHCVに感染させる実験で、NPC1L1の働きを妨げる高脂血症治療薬エゼチミブを事前に投与すると、7匹のうち5匹は感染しなかった。また、HCVに感染させた細胞にエゼチミブを加えると、HCVの増殖が抑えられた。


元論文のタイトルは、”Identification of the Niemann-Pick C1–like 1 cholesterol absorption receptor as a new hepatitis C virus entry factor”です(論文をみる)。

HCVの感染者は世界全体で、およそ1億7000万人に上るといわれています。現在までの治療法は効果が低く、新しく登場するプロテアーゼ阻害薬に強い期待が集まっていますが、おそらく単独での完治は難しく、HIV感染と同様、複数の薬物の組み合わせでの治療が必要になるだろうと考えられています。

NPC1L1は、Niemann-Pick C1-like 1(ニーマン・ピックC1様1)の略です。Niemann-Pick病C型は、NPC1またはNPC2遺伝子の変異によって起こるコレステロールとスフィンゴミエリンの蓄積症です。これらの異常蓄積のために、幼児期に小脳失調などの神経系異常と肝脾腫が現れ、10~20歳で死亡する遺伝病です。

NPC1L1は上記のNPC1と異なる遺伝子ですが、アミノ酸配列が似ていて小腸に多く発現し、そのノックアウト(KO)マウスのコレステロール吸収率は野生型の約15%です。シェリング・プラウの開発したエゼチミブ(ezetimibe、ゼチーア®)を野生型マウスに投与するとNPC1L1 KOマウスと同程度にまでコレステロール吸収率が低下し、NPC1L1 KOマウスにezetimibeを投与しても吸収率のさらなる低下は認められませんでした。これらの結果から、ezetimibeはNPC1L1に作用すると考えられています。

研究グループは、NPC1L1の発現を抑制すると、ヒト細胞のHCV感染が起こらなくなること、さらに、エゼチミブが、ヒト肝臓を移植したマウスで、HCVの侵入を強力に阻害してHCV感染を妨げることを示しました。NPC1L1は霊長類の肝臓にしか発現していないので、このような移植実験をする必要があるそうです。日本人著者2人は、この移植実験に貢献したようです。

MSDとバイエルは喜んでいるでしょうね。

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