微小がん、スプレーで蛍光=内視鏡手術の成功率向上期待―東大と米国立研が試薬開発
以下は、記事の抜粋です。
がんの外科手術の際、スプレーすると数分後に微小ながんが緑色の蛍光を発し、見分けられる試薬を開発したと、東大医学系研究科の浦野泰照教授や米国NCIの小林久隆主任研究員らが11月23日付のScience Translational Medicineに発表した。内視鏡などを使ってがんを切除する際、取り残しを防ぐことができ、手術の成功率が高まると期待される。
研究チームは、正常な細胞には少ないが、がん細胞には非常に多い物質を探し出し、この物質にだけ蛍光試薬を結合させて光らせる方法を考案。アルコール性肝障害などの指標として利用される「ガンマGTP」によく似た酵素「GGT」を見つけた。
GGTは、肺や肝臓、乳、卵巣などさまざまながん細胞の細胞膜上に多く存在し、「グルタチオン」を取り込む役割を果たしている。研究チームは、GGTに結合すると、蛍光物質を生成し、がん細胞内に蓄積される試薬「gGlu-HMRG」を開発した。
元論文のタイトルは、”Rapid Cancer Detection by Topically Spraying a γ-Glutamyltranspeptidase–Activated Fluorescent Probe”です(論文要約をみる)。gGlu-HMRGは、γ-glutamyl hydroxymethyl rhodamine greenの略で、下図のように、γ-glutamyltranspeptidase (GGT)によってグルタミン酸が除かれるとHMRGという蛍光物質になります。
ヒトの11種の卵巣がん由来培養細胞ではGGTが高発現しており、HMRGへの活性化が認められました。また、卵巣がんのマウスモデルでは、スプレー後1分でがん組織が確認できたそうです。この論文での卵巣がんのように、GGT活性がバックグラウンド組織で低く、腫瘍で高いことが確認できる場合には、外科的あるいは内視鏡的に便利な手段になる可能性があると思います。
細胞膜表面上のGGTにより強い蛍光を発するHMRGが生成する(JSTより)
卵巣がん腹膜播種モデルマウス。がん部位が強く蛍光を発する。
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