以下は、記事の抜粋です。
NASAが11月16日に発表したところによると、木星の衛星エウロパの分厚い氷殻の中に、北米の五大湖の水量をすべて合わせたほどの巨大な塩水の水域が存在する可能性があるという。
テキサス大学の上級研究員Don Blankenship氏は取材に対し、「以前から、木星の衛星エウロパには生命が存在する可能性があると考えられてきたが、今回この氷に覆われた衛星に特定の興味深い領域が見つかったため、今後は研究の対象をそこに集中させることができる」と述べている。
地球の月ほどの大きさのエウロパは以前から、厚さ100キロの氷殻の下に、衛星全体を覆う塩水の海を持つと考えられてきた。宇宙探査機ガリレオが1995~2003年に木星とその衛星を調査した際に、海の存在を示唆する証拠が見つかった。
今回、研究チームは、ガリレオが撮影したエウロパの表面の画像から、湖の位置を特定した。カオス地形と呼ばれる地形は、漂流する氷山や流氷が寄り集まったような領域で、エウロパ全体を覆う棚氷が部分的に崩壊しているところだ。
チームは、地球に見られる現象をエウロパの現象と結びつけて考えることで、エウロパに湖が存在するとの推論を導き出した。Blankenship氏によると、エウロパの氷の下には、おそらくさらに多くの湖が存在するという。また、それらの湖を覆う氷の層の一部は、これまで考えられていたよりはるかに薄い可能性が示唆された。 今回の研究成果は、11月16日付で「Nature」誌のオンライン版に発表された。
元論文のタイトルは、”Active formation of ‘chaos terrain’ over shallow subsurface water on Europa(「カオス地形」はエウロパの浅い地下水の上で活発に形成される)”です(論文をみる)。
上記のように、エウロパに海があることは確実視されていましたが、厚い氷に覆われているため、地表と接触できず、生命の維持もできないと考えられていました。今回の解析結果では、表面から約3キロのところに湖が存在し、その表面は活発に動いて混ざり合っている可能性が出てきました。
論文によると、カオス地形では、その表面に過去においてひっくり返ったり転がったりして鋭い縁を持つようになった多様な形態の氷塊や浮氷が存在しているそうです。これらの氷塊は、氷地殻内で3キロメートルほどの浅いところに形成されたレンズ状の液体の宙水の上で、氷–水相互作用や凍結という活発な表面更新作用によって形成されたと考えられるそうです(下図)。
いずれにしても、わかったのは衛星の表面近くに融けた水があるということです。ここに生命が存在するかどうかは、今後の研究にかかっています。
エウロパの地下海の上を覆う厚い氷殻の中に閉ざされた湖の想像図(元記事より)
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