筋萎縮性側索硬化症(ALS)におけるdexpramipexole (KNS-760704)の効果

The effects of dexpramipexole (KNS-760704) in individuals with amyotrophic lateral sclerosis

以下は、論文要約の抜粋です。


筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)は、運動ニューロンの機能不全と消失、急速に進行する筋力低下、消耗、死などを特徴とする疾患である。原因としては、ミトコンドリアの機能不全などの多くの要素が考えられている。

リルゾール(Riluzole、リルテック®)という、進行を少し遅らせる作用をもつが筋肉の強さや機能には効果がない薬物が、承認を受けた唯一のALS治療薬である。

研究者らは、ミトコンドリア修飾作用をもつと思われるdexpramipexole (KNS-760704; (6R)-4,5,6,7-tetrahydro-N6-propyl-2,6-benzothiazole-diamine)という薬物を用いて、ALS患者に対して2部構成の二重盲検試験を行い、安全性と忍容性を確認するとともに、予備的に機能喪失と死亡率に対する効果も調べた。

その結果、第1部ではDexpramipexoleの安全性と忍容性が確認され、ALS Functional Rating Scale-Revised (ALSFRS-R)と肺機能を容量依存的に改善する傾向が認められた。第2部では、統計学的に有意なALSFRS-Rの改善と死亡リスクの減少が認められた。


関連記事で紹介したように、ALSは中年期に発症し、運動ニューロンの進行性変性を特徴とする疾患です。ほとんどは孤発性ですが家族性に発症する場合もあり、superoxide dismutase 1 (SOD1)、ANG、DNA結合タンパク質TDP-43をコードするTARDP、FUS (TLSともよばれる)、オプチニューリン(optineurin 、OPTN)などが家族性ALSの原因遺伝子として知られています。

上の記事にも書かれていますが、承認されたALS治療薬は、リルゾールだけです。リルゾールはALSの「グルタミン酸過剰仮説」に基いて開発された薬物で、グルタミン酸による神経毒性を抑え、神経細胞を保護する作用を持つとされています。

リルゾールは、ALS患者の生存期間や人工呼吸器装着までの期間を少し延長させるという結果が出ています。しかし、リルゾールには、病気の進行を抑える作用はありますが、症状を改善したり、回復させる効果はありません。また、症状が進んで呼吸障害が起こっている場合は、使用することはできません。

今回の論文で報告されたdexpramipexoleは、機能低下の指標(ALSFRS-R)に対して臨床的に有意な効果を示し、死亡率の低下も期待される薬物です。今後スタートする第3相臨床試験の結果が待たれます。

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