初の経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス」
ペプチドが経口投与で吸収できるようになるとは思っていませんでした。飲み方はちょっと難しいですが、大きな進歩だと思います。以下は、記事の抜粋です。
GLP-1受容体作動薬とは糖尿病治療薬の1つで、GLP-1受容体に作用して血糖依存的にインスリン分泌を促すお薬です。
既にリラグルチド(ビクトーザ)、エキセナチド(バイエッタ、ビデュリオン)、リキシセナチド(リキスミア)、デュラグルチド(トルリシティ)といった複数の注射薬が上市されているのですが、ペプチドであるGLP-1受容体作動薬をそのまま投与しても、消化酵素によって分解されてしまい吸収できないため、これまで経口薬は存在していませんでした。
ではなぜ経口薬を作る事ができたのでしょか?それは「サルカプロザートナトリウム(SNAC)」と呼ばれる吸収促進剤を添加することで、セマグルチドの胃からの吸収を可能にしたそうです。
「注射よりも楽になるので良かった!で、この薬はいつ、どうやって飲むの?」と気になるかと思います。用法に縛りが無ければ良かったのですが、残念ながらいくつか注意が必要のようです。
セマグルチドを胃で十分に吸収させるために、同薬は
① 1日1回、起床時にコップ半分(約120ml)程度の水とともに服用する
② 服用後最低30分は絶飲絶食状態を保つ(朝食はその後)必要がある
上記2点を順守する必要があるそうです。
食物を摂った状態ではセマグルチドが胃粘膜に吸着せず、薬剤の効果は著しく低下します。さらに服用時の水の量が多くても少なくても十分な効果を発揮できず、服用後30分より短い時間しか置かずに食事を摂ると、やはり効果は減弱してしまうそうです。
いくつかの臨床試験では単独療法でも他の経口血糖降下薬1剤との併用療法でもHbA1cの低下が1.5~2%程度認められ、既存の注射薬と比較しても遜色ない、むしろわずかに上回っている結果が出ているようです。なお、このリベルサスに含まれているセマグルチドは「オゼンピック皮下注」という注射薬でも発売されました。
以下は、MSDサイトでの説明です。なかなかすごい技術です。
セマグルチドはヒトGLP-1と94%のアミノ酸配列の相同性を有するヒトGLP-1アナログ製剤である。セマグルチドは、リラグルチドと同様にアシル化技術に基づいているが、さらにその化学構造に重要な修飾を行うことにより半減期を延長させている。セマグルチドの半減期延長はアルブミンの脂肪酸結合部位と特異的に高い親和性を有すること及びDPP-4による分解からの保護によるものであり、以下の特異的な修飾が施されている。
●DPP-4に対する安定性を向上させるため、ペプチド骨格内8位のアミノ酸を修飾(アラニンを2-アミノイソ酪酸で置換)
●26位リジンに高分子親水性リンカーとγグルタミン酸を介してカルボキシル末端を有するオクタデカン二酸を結合
●ペプチド骨格内のリジンを1つに限定するため、34位リジンをアルギニンで置換
リンカーと脂肪酸はいずれもアルブミン結合親和性の増強に寄与し、血漿中でのセマグルチド分解を遅延させ、結果的に腎クリアランスを低下させる。これらの修飾によりセマグルチドの血漿中濃度消失半減期は約1週間まで延長される。
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