経口ビスホスホネート剤と食道、胃、結腸・直腸がんリスクについての症例対照解析

骨粗鬆症治療薬に食道がんリスク

以下は、記事の抜粋です。


骨粗鬆症患者に対して骨量減少を防ぐ目的で使用されている薬剤群が食道がんにかかるリスクを増大させることが最新の調査で明らかになった。

British Medical Journalに発表された調査報告によると、骨粗鬆症治療薬のビスホスホネートを5年間服用、もしくは医師の処方を10回以上受けた患者は、そうでない患者と比較して食道がんと診断される確率が2倍以上高かった。

今回の調査は英国の医療データベースを用い、1万5000人を超えるがん患者を平均8年間追跡調査した。処方箋と患者記録の比較を行った結果、少なくとも1回の経口ビスホスホネート剤の処方で食道がんのリスクが30%増加し、10回以上になると約2倍になることが明らかになった。胃がん、結腸・直腸がんリスクとの関連は見られなかった。


元論文のタイトルは、”Oral bisphosphonates and risk of cancer of oesophagus, stomach, and colorectum: case-control analysis within a UK primary care cohort”です(論文をみる)。

論文にも書かれていますが、調査の行われたヨーロッパでの食道がんの発生率は、60-79歳の人口1000人あたり1人です。論文の結論によると、ビスホスホネートを長期に服用した場合には、これが1000人あたり2人になるということです。

一方、骨粗鬆症の日本での患者数は、1000万人を超え、70歳を超えた女性の約50%が骨粗鬆症だと推定されています。また、女性の2人に1人は骨粗鬆症による骨折を経験するといわれています。関連記事にあるように、ビスホスホネート剤が乳がんリスクを減らすという報告もあります。

これらのことを総合的に考えると、この論文の結果が事実だとしても、骨密度がかなり下がっている場合、食道がんを恐れてビスホスホネートを服用しないというのはあまりお勧めできません。

論文に用いられたデータベースでは、主に3種類のビスホスホネートが使用されています。エチドロン酸(etidoronate)、アレンドロン酸(alendronate)、 リセドロン酸(risedronate)です。2000年に研究がスタートした頃は毎日服用するエチドロン酸が主流でしたが、2005年以降は週1回服用するアレンドロン酸やリセドロン酸が主流になりました。

ビスホスホネートには、「食道炎や胃炎を避けるため、服用後30分は横にならないでください」という注意書きがあります。このような副作用があるために製剤開発が進み、上記のように毎日から週1回に投与頻度が減少しました。今後は月に1回あるいは年に1回というものも出てくる予定です。

食道がんは食道炎との関連が考えられているので、これらの投与頻度が少ない製剤の開発によって、食道がんリスクは減少する可能性があります。今後は、投与頻度や個別の薬剤と食道がんリスクの評価が重要になると思います。

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