アスピリンは血小板TXA2によるT細胞免疫の抑制によって転移を予防する

アスピリンのがん転移抑制の仕組みが判明
以下は、記事の抜粋です。


COX阻害薬であるアスピリンの連日服用と固形がんの肺、肝臓、脳などへの転移が36%低くて済むことの関連が大規模無作為化試験のメタ解析で示されています。また、診断時点で転移がなかったがん患者の低用量アスピリン使用とがんによる死亡率の低下の関連もいくつかの試験で認められています。

アスピリンが阻害する2つのCOX酵素の1つのCOX-1はほとんどの組織で発現しており、血小板では凝固因子であるトロンボキサンA2(TXA2)の生成に携わります。もう1つのCOX-2はもっぱら炎症の際に生じます。

アスピリンは体内で短命(半減期約20分)であり、有核細胞のCOX-1やCOX-2を阻害し続けるには高用量を頻回投与する必要があります。一方、毎日の低用量アスピリン服用の主な矛先は血小板のCOX-1と同酵素が携わるTXA2生成です。無核の血小板のCOX-1は一度不活化されると再合成が不可能であり、低用量アスピリンで永続的に阻害されます。

ケンブリッジ大学の研究チームの新たな研究でARHGEF1というタンパク質は転移へのT細胞免疫を妨げており、ARHGEF1を省くとT細胞機能が向上すると判明しました。さらに、血小板でCOX-1に依存して作られるTXA2からの伝達もT細胞を抑制し、ARHGEF1がその伝達経路の一員であることが示されました。

アスピリンはT細胞のARHGEF1を欠くマウスの転移を減らせませんでした。また、長持ちなTXA2の類い(U46619)をアスピリンとともに投与した場合もアスピリンは転移を減らせなくなりました。一方、T細胞のARHGEF1を欠くマウスにTXA2を与えたところで転移頻度は変わりませんでした。それらの結果は、アスピリンの転移阻止活性はTXA2を減らし、TXA2のARHGEF1依存的なT細胞抑制を解く作用のおかげであることを示しています。

COX-1選択的阻害薬や血小板のCOX-1除去でTXA2を減らすこともアスピリンと同様に転移を抑制しました。

研究チームは、国際共同無作為化試験Add-Aspirinと提携し、早期がんの治療を終えた患者がアスピリンを常用することで再発や死亡を防げるかどうかを調べています。


元論文のタイトルは、”Aspirin prevents metastasis by limiting platelet TXA2 suppression of T cell immunity(アスピリンは血小板TXA2によるT細胞免疫の抑制によって転移を予防する)”です(論文をみる)。

アスピリンは、100mgの腸溶錠が1錠5.7円という極めて安価な薬です。これでがんの転移が防げるなら素晴らしいと思います。臨床試験の結果が待たれます。

アスピリンががんの転移を抑制するメカニズム

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