厚労省「健康寿命をのばそう!」は騙されていた…「健康寿命」日本一を主張する県が2つあるワケ
以下は、記事の抜粋です。
長野県と静岡県、健康寿命日本一はどっち?
厚生労働省が使う「健康寿命をのばそう!」が人生100年時代を象徴するキャッチフレーズとなっている。健康寿命は、WHOが2000年に提唱した健康指標で、その定義は「日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間のこと」だという。
その健康寿命に、現在、男女ともに「日本一」だと胸を張る県が2つある。長野県と静岡県だ。昨年発表された長野・静岡両県の健康寿命の数値は全く違っていて、同率1位というわけではない。どう考えても、日本一が2つあることはおかしくなる。
どちらかの県が嘘をついているのだろうか。それとも勘違いしているのだろうか。両県のHPを見れば、いずれも健康寿命「日本一」だと自信を持って主張している。
長野県健康福祉部は昨年8月9日、2022年数値で同県の「健康寿命」が、女性は7年連続、男性は2年連続で日本一となったと発表した。発表資料には、「要介護度をもとにした健康寿命」と断り書きがある。65歳以上の高齢者を対象に、要介護度判定に基づき要介護度2以上を「不健康」とみなして、「健康寿命」の数値を出している。
要介護とは、介護を必要とする段階を示すもので、市町村が要支援1、2、要介護度1~5の7段階を審査・判定している。要介護度1は、日常生活動作はほぼ自分でできるが、部分的な介護が必要とされる状態で認知機能の低下が見られることもあるとされる。要介護度1であっても、日常生活動作が自立しているから、「健康」とみなしているようだ。要介護度1と2の違いは微妙だが、市町村の担当者らが審査・判定しているから信頼度は高いと言える。
その結果、長野県の2022年健康寿命は、男性81・0歳(全国平均79・7歳)、女性84・9歳(同84・0歳)で、47都道府県の中で最も高かった。同県の平均寿命は男性82・3歳(全国平均81・1歳)、女性87・7歳(同87・1歳)だから、男性で1・3年、女性で2・8年、平均でも約2年間が「不健康」な期間と算出された。
一方、静岡県の健康寿命は男性80・1歳(平均寿命81・4歳)、女性84・3歳(同87・1歳)である。男女とも全国平均を上回るが、長野県には男性で0・9歳、女性で0・6歳下回っている。
静岡県が「健康寿命が男女ともに全国1位だ」と主張し始めたのは、昨年12月24日に開催された厚生労働省主催の委員会で公表された2022年の都道府県別健康寿命で日本一に輝いたからだ。
長野県を健康寿命日本一としたのは国保中央会の調査だが、静岡県の主張は厚労省の研究班によるものだ。こちらは3年に1回、都道府県別健康寿命を発表している。
その調査によると、静岡県は男性73・75歳(全国平均72・57歳)、女性76・68歳(同75・45歳)で47都道府県の中で男女とも初めて全国1位となった。「不健康」期間は約10年もあることになる。
厚労省の研究班が公表した「健康寿命」の計算式は、「年代別人口当たり死亡数」、「年代別不健康割合(国民生活基礎調査の「日常生活の制限に関する質問」)」、「全国の生命表情報」を基にしている。
厚労省の国民生活基礎調査(健康票)の質問5に、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問がある。その質問で、「ある」を選んだ人は「不健康」、「ない」を選んだ人は「健康」に分類されるというのだ。あまりにも主観的であり、信頼度は低い。
2022年の健康寿命が算出されたアンケート調査は、全国約20万世帯の約45万人から回答を得たという。そのうち、65歳以上の高齢者は約23万人と推定される。残りの約22万人の回答者は高齢者ではなく、子どもから高齢者までさまざまな年齢層がごちゃ混ぜになっている。厚労省は高齢者に限らず、国民すべてを対象として「健康寿命」を算出していたのだ。
長野県の健康長寿「日本一」は65歳以上の高齢者に限定したものであり、静岡県のほうは高齢者ももちろん含まれるが、すべての年代を対象にしているわけだ。
たとえば、「うつ病やその他のこころの病気」「眠れない」「いらいらしやすい」「もの忘れする」「頭痛」「鼻がつまる」「かゆみ」「便秘」「下痢」「食欲不振」「肩こり」「手足の冷え」「頻尿」「けが」などの自覚症状があるだけでも問題はあると言える。また、「糖尿病」「高血圧症」「目の病気」「歯の病気」「アトピー性皮膚炎」などで、病院や診療所、鍼灸院などに通っている人たちも日常生活に影響があり、「不健康」に分類される。
40代、50代の中年世代となれば、何らかの症状を訴えなくても、高血圧などで定期的に病院通いの人も多い。中年世代が「不健康」に分類されれば、平均寿命まで30年、40年以上もあるから、健康寿命の年齢は押し下げられてしまう。
担当の厚労省健康課は「国民全体の健康づくり運動の一環であり、高齢者に特化しているわけではなく、全世代を対象にしている。厚労省の健康寿命では、自立した日常生活ができる期間を健康寿命と呼んでいるわけではない。そのために、健康寿命の考え方を誤解している人も多い」と話していた。実際、厚労省の健康寿命を勘違いして、高齢者になると、70代半ばころまでにふつうの生活ができなくなり、その後は介護を必要とすると考えている人は多い。
調べた限り、東京、兵庫、奈良、島根の4都県が長野県と同様に、介護度2以上という判断基準で健康寿命を算出している。滋賀県ではこの2つの健康寿命を併記している。一方、静岡県をはじめほとんどの自治体が、厚労省の健康寿命を採用している。
長野県と静岡県のどちらが「健康寿命日本一」かというと、客観性の高い基準で計測している長野県に軍配を上げたい。むしろ、47都道府県すべてが、介護度にもとづく健康寿命を採用すべきである。
そうすれば、日ごろから口酸っぱく叫ばれている「健康寿命をのばそう!」というキャッチフレーズもいつのまにか消えてなくなるかもしれない。
僕も「健康寿命」については、完全に厚労省に騙されていました。記事に書かれているように、「健康寿命をのばす!」と言っても、70歳以上で介護度2以上となる高齢者が出てくるのは避けられず、この2年間の「不健康」な時期をさらに縮めるのは至難の技だと思います。

厚生労働省が発表する「健康寿命」
コメント