潰瘍性大腸炎に対する1日1回の経口薬オザニモドを発売/BMS
以下は、記事の抜粋です。
ブリストル マイヤーズ スクイブは2025年3月19日、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬オザニモド(商品名:ゼポジア)を発売した。
オザニモドは、潰瘍性大腸炎に対する新規作用機序の治療薬である。S1P1受容体および S1P5受容体に高い親和性を持って選択的に結合するS1P受容体調節薬であり、リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し、S1P1受容体の内在化および分解を誘導することにより、リンパ球を末梢リンパ組織内に保持する。この作用によってリンパ球の体内循環を制御し、病巣へのリンパ球の浸潤を阻害することで、潰瘍性大腸炎の病理学的変化を改善すると考えられている。
本薬剤は、再発型多発性硬化症の成人患者および中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の患者に対する治療薬として、2020年以降に米国、欧州などの多くの国で承認されており、長期的な安全性プロファイルを有する。また、1日1回投与の経口薬であり、患者の負担を軽減し、QOLの向上に寄与することが期待されている。
<製品概要>
販売名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg
薬価:12,313.30円(スターターパック1シート)、4,792.80円(0.92mg 1カプセル)
効能又は効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)
用法及び用量:通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する。
このスフィンゴ脂質のひとつであるS1Pは、セラミドの代謝産物であるスフィンゴシンがスフィンゴシンキナーゼ(SphK)によってリン酸化されることで細胞内において産生され、細胞外へ放出された後、生理活性物質として細胞膜上に存在するGタンパク質共役型受容体ファミリーであるS1P受容体に作用することで、細胞運動、細胞増殖、細胞接着、神経伝達物質放出など様々な細胞応答に関与することが知られています。
私は以前、免疫抑制作用を持つFTY720(フィンゴリモド)を研究していたことがあります。FTY720は、体内でSphKによってリン酸化されてFTY720リン酸となり、これがS1Pを模倣してリンパ球上のS1P受容体に結合することが明らかになりました。この発見により、胸腺やリンパ節からリンパ球が遊走する際にS1Pが重要な役割を担っていることが明らかになりました(私が明らかにしたのではありません)。また、知り合いが以前の研究テーマにしていたので、S1Pは気になっていました(サイトをみる)。
潰瘍性大腸炎の患者数は、約22万人と推定されています。これは、近年毎年約1万人増加している疾患で、日本は米国に次いで世界第2位の患者数を有しています。既存の薬物で良好なコントロールが得られる人が大半ですが、難治性の場合もかなりあるので、このような新薬が登場する意義は大きいと思います。
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