「23andMe」の破産について

米遺伝子検査企業「23andMe」が破産、経営難と非公開化プロセスの頓挫で
以下は、記事の抜粋です。


米国の遺伝子検査会社の23andMeは、ミズーリ州の連邦破産裁判所に申請を行ったと3月23日付けのプレスリリースで発表した。同社は、このプロセスの間も事業を継続するとし、顧客データの保管や管理、保護の方法には「一切変更がない」と述べている。

裁判所が破産の計画を承認すれば、同社は45日間にわたり入札を募り、複数の入札者が現れた場合にはオークションを実施する予定だとしている。

23andMeは、同社の共同創業者であるアン・ウォジスキ氏がCEOを辞任したことも発表したが、彼女は今後も同社の取締役会にとどまるという。ウォジスキは先月、投資会社のニュー・マウンテン・キャピタルと提携し、同社の発行済株式を1株あたり2.53ドルで買収する入札を試みたが、この取引は失敗に終わっていた。

今月初めに、ウォジスキは改めて1株あたり41セントという大幅に低い価格で買収を提案したが、この取引も、同社の独立取締役による特別委員会によって即座に拒否されていた。

ウォジスキは、X(旧ツイッター)の投稿でCEOを辞任したことを明かし、「このような結論に至ったことや、入札が拒否されたことは残念だが、私は会社を支持しており、入札者として引き続き取引に関与するつもりだ」と述べている。

23andMeは、2021年に上場した。同社の時価総額は、上場直後に60億ドル(約8990億円)に達し、ウォジスキはビリオネアとなっていた。しかしその後、同社は利益を上げられず、株価は99%以上も下落した。さらに、2023年にはハッカー集団が複数のユーザーのログイン認証情報を推測し「DNA Relatives」という機能を利用して、システムに侵入し、さらに多くのユーザーの情報をスクレイピング(抽出)するという大規模なデータ漏えい事件が発生した。

盗まれたデータはハッカーのフォーラムで共有され、犯人側は、アシュケナージ系ユダヤ人(東欧諸国にルーツをもつユダヤ人)に関する100万件のデータポイントがサンプルに含まれていると主張した。さらに、このデータには、マーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクといったテック系富豪のものだとされる未検証のデータが含まれていたと報じられた。

ハッカーは、データを盗まれた人々の性別や祖先の情報などにもアクセスしていた。この漏えいを受けて提訴された23andMeは、影響を受けたユーザーに3000万ドル(約45億円)を支払い、3年間のセキュリティ監視を提供する条件で和解していた。


これを受けて、中村佑介氏は以下のようにアゴラに書いています。すごくネガティブです。以下は、その抜粋です。


23andMe発足当時のウォジスキの夫は、Googleの共同創設者のセルゲイ・ブリンであった。

最初は、遺伝子多型を利用した病気のリスク診断や薬剤の効果・副作用の診断を目指していたが、米国FDAとの協議がうまくいかず、会社の方向性を大きく変えた。クリスマスや感謝祭のプレゼントとして、「祖先を当てる遺伝子検査を99ドルで提供する」などと話題になったこともあるが、結局は究極の個人情報であるゲノムの情報の流出という不祥事が会社の事業に大ブレーキをかけた形となった。

日本でもゲノム医療と称してDTC(Direct-to-Consumer)検査が行われつつある。遺伝子の違いによる病気のリスクは非常に民族間の差が大きく、現状では問題が多い。

このような科学的な不確実性に加え、個人情報の管理という点で大きな課題がある。もし、祖先探し(これも不確実である)を受ける際に、いろいろな質問票に対する回答をすれば、個人情報の漏洩の際には、きわめてプライベートな情報が流出し、大きな禍根を残す事態に発展しかねない。

23アンドミーのような有名なIT企業から派生した企業でも、膨大な情報流失を防げなかったのだから、中小規模の企業単独でセキュリティーを保証することなどできるはずもない。本当は国レベルで情報のセキュリティーを担保していくような仕組みが必要だ。


おもしろい買収案が出ています。以下は記事の抜粋です。

Sei財団、23andMe買収で遺伝子データのブロックチェーン移行を計画

レイヤー1ブロックチェーンSeiを支える非営利開発組織Sei財団は、倒産したゲノム企業23andMeの買収と、1500万人のユーザーの遺伝子データをブロックチェーンのレールに乗せることを検討している。

同財団は、特に23andMeが経営難に陥っている今、ゲノムデータのセキュリティは国家安全保障上の問題であると述べた。

買収が進めば、Sei財団は23andMeのデータをブロックチェーンに統合し、ユーザーに遺伝子データの所有権を与え、暗号化された転送によってプライバシーを確保し、個人が自分のデータをどのように収益化するかを決定できるようにする計画だ。

「これは単に会社を救うということではなく、最も個人的なデータをコントロールできる未来を築くということなのだ」と、同財団は述べた。

23andMeの破産申請以来、同社の顧客に対し、プラットフォームからデータを削除するよう警告している州司法長官が数多くいる。

SeiネットワークのネイティブトークンであるSEIは、このニュースを受けて3%も上昇したが、その後上げ幅の一部を戻した。


アメリカは「ベンチがアホやから野球ができへん」状態ではまだまだなさそうです。格安ゲノム解析ビジネスの行方を注目したいと思います。

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